*

『そして父になる』子役にはドキュメンタリー、大人にはエチュード

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:サ行

 

映画『そして父になる』は気になる作品。
自分も父親だから。

6年間育てていた自分の息子は
実は他人の子だったというお話。

是枝裕和監督の作品は疲れる。
どのシーンにも緊張感がはしり、流し観ができない。
冒頭のお受験にシーンから、ぐったりする。

それが好きか嫌いか分かれるところでしょう。

福山雅治演じる良多は、エリートサラリーマン。
本人もスノビッシュで、正直いい人とは言いがたい。

自分の息子が、
よその家の子のとりちがいだとわかり、
良多は半ば強引に、ある決断をします。

「自分ならどうする?」、
「この家族はどうなっちゃうんだろう?」と、
たえず考えながらの鑑賞です。

演出が丁寧に描かれているので、
観る方は納得しながら、物語についていけます。

物語が進むにつれ、
良多が少しずつ変わっていくのです。
もちろん最後は号泣必至!!

良多は間違った選択をしたように見えるけど、
実は必要な経験だったというお話です。
どんな選択をするのかは、ネタバレなので書きませんね。

是枝監督の話によると、
実際に子どものとり違い事件では、
良多と同じ選択をして、
そのまま進んでしまうケースの方が圧倒的に多いそうです。
映画を観た後では意外に感じます。

映画に出てくる子ども達がホントにかわいい!!
この映画の是枝監督の作品は、
どの作品でもいつも子ども達が良い!!

なんでも子ども達には台本は渡さなかったらしいです。
その場で、大人達の演技をみての素直なリアクション。
それでも映画になっちゃうんだから凄い!!

大人の役者からは、
子どもがどう返してくるかわからないので、
演技プランもあまりできないだろうし、
ちょっとしたエチュードといったところでしょう。

そして子どもにとっては、
お題が分からずに状況に合わせていくので、
ドキュメンタリーといったところ。

こういった実験的な演出が、
是枝組では当然となっているのだから、
不思議空間です。

子どもを持つ身としては、
子役の子どもが良い演技をする場面ではいつも
「演技」と言う名の「虐待」を想像してしまいます。

子どもの演技にストレスを感じさせない
是枝演出の見事な手法です。

カンヌで評判が良かったのも納得です。


関連記事

『ソウルフル・ワールド』 今そこにある幸福

ディズニープラスを利用し始めた。小学生の息子は、毎日のように自分で作品を選んで楽しんでいる。

記事を読む

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 自分のことだけ考えてちゃダメですね

※このブログはネタバレを含みます。 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの四作目で完結

記事を読む

no image

『SING』万人に響く魂(ソウル)!

「あー楽しかった!」 イルミネーション・エンターテイメントの新作『SING』鑑賞後、ウチの子たちが

記事を読む

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』 坂本龍一、アーティストがコンテンツになるとき

今年の正月は坂本龍一ざんまいだった。1月2日には、そのとき東京都現代美術館で開催されていた『

記事を読む

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の話題で沸いていた。映画ファンが

記事を読む

no image

『すーちゃん』女性の社会進出、それは良かったのだけれど……。

  益田ミリさん作の4コママンガ 『すーちゃん』シリーズ。 益田ミリさんとも

記事を読む

no image

『幸せへのキセキ』過去と対峙し未来へ生きる

  外国映画の日本での宣伝のされ方の間違ったニュアンスで、見逃してしまった名作はたく

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自分もNetflixに加入してい

記事を読む

『シェイプ・オブ・ウォーター』懐古趣味は進むよどこまでも

今年2018年のアカデミー賞の主要部門を獲得したギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・

記事を読む

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

『僕らの世界が交わるまで』 自分の正しいは誰のもの

SNSで話題になっていた『僕らの世界が交わるまで』。ハートウォ

→もっと見る

PAGE TOP ↑