『帝都物語』 混沌とした世にヤツは来る!!

9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったことから、この9月1日は大地震について備える日となった。この『帝都物語』は関東大震災の場面があるので、ふと思い出した。
『帝都物語』は荒俣宏氏の小説で、東京の史実とフィクションを上手に融合させた娯楽作品。徹底的に調べ上げられた歴史描写はリアリティがあって、この物語は実際に起こったことなのではと錯覚してしまう。作品を読んでいると、とても勉強になってしまうのです。東京が混沌とした時代を狙って、加藤保憲という架空の妖怪のような存在が妖術を使って東京を乗っ取ろうとするのが大筋。関東大震災も魔人加藤によって引き起こされたことと作中では描かれている。自分はこの『帝都物語』に初めて触れたのは映画版から。加藤保憲役を嶋田久作さんが演じているのだけれど、もうその存在感で魔人加藤というキャラクターは完成されてしまっている。『魔人加藤=シマキュウ(嶋田久作さん)』観たさに、この映画を観たような気がする。
映画版『帝都物語』の演出は『ウルトラマン』でも有名な実相寺昭雄監督、脚本は『夢見るように眠りたい』や後の『私立探偵 濱マイク』シリーズの林海象氏、こりゃ期待しないはずはない。当時10代前半の自分は、近所の映画館に友達と観に行ったものです。映画館は大入りでした。でもみんな「?」となってしまった。話が理解できないんです。でも「わからない」という言葉は禁句とばかりに、みんな首を傾げながら映画を観続ける。この映画、ヒットはしたしインパクトはあったのだけれど、失敗作なのは否めない。それでも興味をそそる作品だったので、あとから原作を読んでみた。原作小説を読んで、どうして映画版が難解だったのかすぐわかった。原作の途中から話が始まっているからだと。膨大な原作の勺を二時間強の映画に収めるため、割愛に割愛を重ねて、結局いちげんさんお断りの敷居の高い作品になってしまった。当時の原作ものの映像化の特徴として、原作は当然読んでいる前提のものが多かったような気がする。当時は活字のほうが俄然偉く、映像化はひとつのプロセスでしかなかったのかも知れない。映画化なんて、原作者は興味なかったのだろう。
このいちげんさんお断りの作風を反省してか、映画版第二弾の『帝都大戦』では、とてもわかりやすい作りになったのだけれど、これはこれで物足りないという、なんとも難しい作品。『帝都大戦』は第二次大戦中の東京の混乱を利用して魔人加藤が現れる。世の混沌は魔人加藤が暗躍しているのなら、いまの日本の状況は、魔人加藤にはもってこいの利用時期。荒俣先生!、こりゃあ『帝都物語』の新作の出番です!!
関連記事
-
-
『ダンケルク』規格から攻めてくる不思議な映画
クリストファー・ノーランは自分にとっては当たり外れの激しい作風の監督さん。 時系列が逆に進む長
-
-
『下妻物語』 若者向け日本映画の分岐点
台風18号は茨城を始め多くの地に甚大なる被害を与えました。被害に遭われた方々には心よりお見舞
-
-
イヤなヤツなのに魅力的『苦役列車』
西村堅太氏の芥川賞受賞作『苦役列車』の映画化。 原作は私小説。 日本の人
-
-
ホントは怖い『墓場鬼太郎』
2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で 水木しげる氏の世界観も
-
-
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』ブラックって?
ネット上の電子掲示板『2ちゃんねる』に たてられたスレッドを書籍化した 『ブ
-
-
『裏切りのサーカス』 いちゃいちゃホモソーシャルの言い訳
映画『裏切りのサーカス』が面白いという勧めを知人から受けて、ずっと気になっていた。やっと観る
-
-
『境界のRINNE』やっぱり昔の漫画家はていねい
ウチでは小さな子がいるので Eテレがかかっていることが多い。 でも土日の夕方
-
-
『ノマドランド』 求ム 深入りしない人間関係
アメリカ映画『ノマドランド』が、第93回アカデミー賞を受賞した。日本では3月からこの映画は公
-
-
儀式は人生に大切なもの『ディア・ハンター』
マイケル・チミノ監督の ベトナム戦争を扱った名作『ディア・ハンター』。
-
-
『博士と彼女のセオリー』 介護と育児のワンオペ地獄の恐怖
先日3月14日、スティーヴン・ホーキング博士が亡くなった。ホーキング博士といえば『ホーキング
