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『2001年宇宙の旅』名作とヒット作は別モノ

公開日: : 最終更新日:2019/06/12 アニメ, 映画:ナ行, , 音楽

映画『2001年宇宙の旅』は、スタンリー・キューブリックの代表作であり、映画史に残る名作と語り継がれている。SF作家のアーサ・C・クラークの共同制作作品としても有名。どの映画評でも大絶賛で、この作品が好きと言っておけば、とりあえず映画好きの人と会話して反感かうことはない。安全パイの映画。

自分がこの『2001年宇宙の旅』を観たのは高校生の頃。さんざっぱら名作と聞いていたので、もうへんなレッテルが自分のなかで貼られていた。たとえわからなくとも、それはわからない自分の方が悪いのだと。シュトラウスがかかって宇宙船が遊泳している映像や、『2001年宇宙の旅』というタイトルから、ほのぼのとした内容なのかと思っていた。観てみるとかなりハードなガチSF作品だったので、意表を突かれたものです。

J-POPバンドのポルノグラフィティの曲の歌詞ではないが、自分の生まれる前にすでにアポロ11号が月着陸を果たしていた。その前に発表された『2001年宇宙の旅』。

自分は小学生のとき『銀河鉄道999』などのSFアニメにハマりまくった。自分の母親の友達のおばちゃんに『機動戦士ガンダム』の話をアツく語っていたら、「私も『2001年宇宙の旅』を観た時は驚いたけど、アポロの月着陸の映像が同じだったので、また驚いたもんだよ」と教えてくれた。今思うと、こんな特殊な映画を普通に観ていたそのおばちゃんは、かなり知的な人だったのではないだろうか?

以前シナリオ作家養成学校に通っていた頃、その講師のおばあちゃん先生も、当時の話題作だった『2001年宇宙の旅』を、公開当時映画館で観たそうです。でも劇場はガラガラで、その先生以外観客はいなかった。何が話題作なのかと笑ってしまったそうです。今でこそ名作と言われている本作だけど、冷静に考えればこんな本格的なSF作品、偏った客層にしか響くはずはない。一般的には非常に難解な映画。ヒットしたら逆に不思議。映画館に閑古鳥が鳴いてる方がごくごく自然。

自分はといえば、日本のSFアニメに夢中になっていたので、本作に影響された、同じようなテーマの作品が多かったからすんなり受け入れられた。『伝説巨神イデオン』なんかも同じ題材だろうし。

当時語られていた映画評で興味深かったのは、日本の作品では、ロボットは『鉄腕アトム』や『ドラえもん』のように、人間の友達として描かれている。それに対して欧米のロボット描写は、本作のHALのように、人間に反旗をひるがえすものが多いということ。『ターミネーター』なんかもそれ。日本人はテクノロジーと密接した職人気質から、ロボットは生活を豊かにしてくれる友達と感じさせるのかも知れない。逆に欧米では、ハイパーテクノロジーは人間に制御できないもの。独自の意思を持ったロボットたちから、奴隷扱いしていた人間たちにいつか報復されるのでは、と潜在的に感じていたのだろう。これは他民族が集まるアメリカらしい考え方。

2001年から15年経ったいま。生み出される作品も、さまざまな影響を重ね、表現の特徴も変わりつつある。日本のアニメの特徴は、いまは逆に海外に影響を与え始めている。ロボットが人間の友達になる精神は、『ベイマックス』のような作品で引き継がれている。もう作品の特徴での国境は薄まりつつある。世界標準というか、感じることはどの国民でも共通のものがあるということだろう。

そうしたら、世界はひとつということで、それこそ宇宙や神の領域に目を向けていくこともできるかも? アーサー・C・クラークが予測してた21世紀とはちょっと違うけど、ある意味予見は当たってた。この映画のラストは、ハッピーエンドともアンハッピーエンドともとれる。キューブリックとクラークの解釈も違うみたいだし、これは完全に観客各々の感性に委ねられる。自分は明るい未来を信じたい。でもそれは人類滅亡もある意味明るい未来だったりする。

この映画は失敗作でもあるし、不朽の名作でもある。かなりギリギリのところ。万人受けはありえない。とても斬新で、カッコイイ映画。この実験的な精神は、商業第一主義となった昨今では、作られにくい種類の作品だろう。

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