猫も杓子も『タイタニック』
ジェームズ・キャメロン監督で誰もが知っている『タイタニック』の音楽家ジェームズ・ホーナーが飛行機事故で亡くなったそうです。ジェームズ・ホーナーはこの映画の主題歌でセリーヌ・ディオンの歌う『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』も、もちろん作曲している。流行っている当時は別段なんとも思わなかったこの曲も、今となっては聴いただけで笑えてしまうコミックソングの一種になってしまった。あんまり猫も杓子も『タイタニック』となってしまったので、ダサい曲の代名詞となってしまうのだから、時代の流れってコワイ。
この『タイタニック』が流行っていた頃、自分は英会話学校へ通っていたのだが、自己紹介の典型的な会話で「趣味は何ですか?」「映画鑑賞です」「どんな映画が好きですか?」という展開になります。講師が必ず「ノー・タイタニック!」って言うんですね。もう『タイタニック』には辟易といった感じでした。ジェームズ・キャメロン作品の特徴としては、普段映画を観ない人に限って夢中になるという現象が起こる。『アバター』なんかもそう。ジェームズ・キャメロンは観客の好みの要素(素材)をたくさん集めてきて、「これ好きでしょっ?」て料理してみるのが得意。この『タイタニック』だってシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』とディザスターもの、アクションものをイノベートしたもの。後続するアクション作品で恋愛要素が多くなったのは、この『タイタニック』のせいだ。でもね、本来のアクション映画ファンはアクションを観たいわけ。恋愛の要素なんて欲しくないの。作る側も恋愛なんて興味のない人だろうから、どれもこれも中途半端。恋愛要素が観たいなら、素直に恋愛映画観るわい!!
1990年代後半はアメリカではタイタニックブームが起こっていた。この映画だけではなく、ミュージカル版で全く別の物語があったりもする。ジェームズ・キャメロンは『ターミネーター1 & 2』や『エイリアン2』でヒットメーカーとなるのだけれど、集まるファンはヤローばかり。「ああ、もっと女の子にモテる映画つくらなきゃ」って、得意のアクションものとラブが融合できないかしらと悩んだんでしょう。『トゥルー・ライズ』なんかもその布石だろうし。SF海洋アクション映画『アビス』の資料集めで、世界の海難事故にすっかり詳しくなって、タイタニック事故の映画なら作れるとなったのでしょう。
もう今となっては誰一人として好きな映画に『タイタニック』をあげる人はいないでしょう。でもやっぱり恋愛ものとディザスターアクションもののイノベーションは本当に上手だった。ずるい鉄板要素を集めるのがうまい監督さんはたくさんいるけれど、大ヒットしてアカデミー賞まで獲っちゃうんだから、それはそれで突き抜けてる。
自分もこの映画を観に行く動機としては『ターミネーター』の監督の新作ということだったから。船が一隻沈没するのに3時間の超大作。どうやって時間配分するんだろうと思った。なんせ一瞬にして核爆発とか起こしちゃう監督だから。でもみたらキッパリ前半は恋愛もの、後半はディザスターものになっていた。前半でキャラクターに感情移入できたぶん、後半の悲劇要素がドラマチックになるという効果。本当にジェームズ・キャメロンってイヤな奴!! この大流行にも流されず、未だに『タイタニック』を観たことがないという映画ファンには尊敬すらしてしまう。ものすごく見る目があるか、ただのひねくれ者にちがいない。
ともあれジェームズ・ホーナーさんのご冥福をお祈りいたします。当時、サントラ買いましたよ!!
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