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『トニー滝谷』 坂本龍一の即興演奏が光る

公開日: : 最終更新日:2021/04/29 映画:タ行, 音楽

先日、自身のがんを公表し、
演奏活動はしばらく休止すると
発表した坂本龍一氏。

反原発活動をしていた経緯から
放射線治療を拒否したと、
マスコミの誤報まで飛んでいた。

こういった部数目当てで勝手に盛って
報道しまうメディアにも困ったものです。

自分は小学生からの坂本龍一氏のファン。
アートやカルチャーに興味を持ったのも
この人のおかげ。
無事の復帰を期待しております。

教授(坂本龍一氏の愛称)といえば
『ラストエンペラー』でアカデミー賞をとった、
インターナショナルな音楽家というイメージが強い。
アカデミー作家となって受賞後は
海外の映画の劇伴も数多く手がけているのだが、
日本の小品にあたるような本作の音楽も手がけている。

原作は、新作を発表すれば一気に
ベストセラーとなる村上春樹氏。

春樹作品を読まれた方はお分かりのように、
彼の作品は現実味が無く、
登場人物が病んでいたり、冷めていたりで、
どうも映像作品にはなりにくい。

村上春樹氏も自作の映像化には
なかなかゴーを出さないらしい。

そんな数少ない春樹作品の映像化に
本作は成功しているといっていいでしょう。

故・市川準監督が実験的な演出で手がけている。
作品は主人公のイッセー尾形氏と宮沢りえ氏の
ふたり以外ほとんど出演しない閉ざされた世界。

市川準監督はドリー(横移動)のシーンつなぎを多用し、
西島秀俊氏のぶっきらぼうなナレーションで紡いでいる。

あたかも本を読んで、場面を想像している読者の
脳内映像を具現化しているよう。

屋根の無い家屋のセットで、風を感じる室内。
無機質でデフォルメされた世界の中、
教授の端正なピアノの音が静かに響いている。

教授への市川淳監督からはの要求は
「音楽が存在していないような音楽を」。
画面を見ながらの即興的演奏。

この感覚的で実験的な映画。
万人受けではないし、
公開時も単館系で上映された。

監督がはっきりとした
演出プランがなければ実現しそうにないので、
こういった個性的な映画の出現は希少。

とかくセンセーショナルで
中身が薄い映画ばかりもてはやされる昨今。

たまにはこんな静かな日本映画も
よろしいのではないでしょうか?

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