*

坂本龍一の即興演奏が光る『トニー滝谷』

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:タ行, 音楽

 

先日、自身のがんを公表し、
演奏活動はしばらく休止すると
発表した坂本龍一氏。

反原発活動をしていた経緯から
放射線治療を拒否したと、
マスコミの誤報まで飛んでいた。

こういった部数目当てで勝手に盛って
報道しまうメディアにも困ったものです。

自分は小学生からの坂本龍一氏のファン。
アートやカルチャーに興味を持ったのも
この人のおかげ。
無事の復帰を期待しております。

教授(坂本龍一氏の愛称)といえば
『ラストエンペラー』でアカデミー賞をとった、
インターナショナルな音楽家というイメージが強い。
アカデミー作家となって受賞後は
海外の映画の劇伴も数多く手がけているのだが、
日本の小品にあたるような本作の音楽も手がけている。

原作は、新作を発表すれば一気に
ベストセラーとなる村上春樹氏。

春樹作品を読まれた方はお分かりのように、
彼の作品は現実味が無く、
登場人物が病んでいたり、冷めていたりで、
どうも映像作品にはなりにくい。

村上春樹氏も自作の映像化には
なかなかゴーを出さないらしい。

そんな数少ない春樹作品の映像化に
本作は成功しているといっていいでしょう。

故・市川準監督が実験的な演出で手がけている。
作品は主人公のイッセー尾形氏と宮沢りえ氏の
ふたり以外ほとんど出演しない閉ざされた世界。

市川準監督はドリー(横移動)のシーンつなぎを多用し、
西島秀俊氏のぶっきらぼうなナレーションで紡いでいる。

あたかも本を読んで、場面を想像している読者の
脳内映像を具現化しているよう。

屋根の無い家屋のセットで、風を感じる室内。
無機質でデフォルメされた世界の中、
教授の端正なピアノの音が静かに響いている。

教授への市川淳監督からはの要求は
「音楽が存在していないような音楽を」。
画面を見ながらの即興的演奏。

この感覚的で実験的な映画。
万人受けではないし、
公開時も単館系で上映された。

監督がはっきりとした
演出プランがなければ実現しそうにないので、
こういった個性的な映画の出現は希少。

とかくセンセーショナルで
中身が薄い映画ばかりもてはやされる昨今。

たまにはこんな静かな日本映画も
よろしいのではないでしょうか?

関連記事

no image

猫も杓子も『タイタニック』

ジェームズ・キャメロン監督で誰もが知っている『タイタニック』の音楽家ジェームズ・ホーナーが飛行機事故

記事を読む

no image

『バッファロー’66』シネクイントに思いを寄せて

  渋谷パルコが立て替えとなることで、パルコパート3の中にあった映画館シネクイントも

記事を読む

no image

『鑑定士と顔のない依頼人』人生の忘れものは少ない方がいい

  映画音楽家で有名なエンニオ・モリコーネが、先日引退表明した。御歳89歳。セルジオ

記事を読む

no image

『ドラゴンボール』元気玉の行方

  実は自分は最近まで『ドラゴンボール』をちゃんと観たことがなかった。 鳥山明

記事を読む

no image

アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。

  ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。

記事を読む

『ベニスに死す』美は身を滅ぼす?

今話題の映画『ミッドサマー』に、老人となったビョルン・アンドレセンが出演しているらしい。ビョ

記事を読む

no image

『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリーのよう

記事を読む

no image

大人になれない中年男のメタファー『テッド』

  大ヒットした喋るテディベアが主人公の映画『テッド』。 熊のぬいぐるみとマーク・

記事を読む

no image

鳥肌実のアヤシい存在感と、まっとうな人生観の映画『タナカヒロシのすべて』

  昨日は8月15日。終戦記念日。 この日で自分がすぐ イメージするのは靖国

記事を読む

no image

『オデッセイ』ラフ & タフ。己が動けば世界も動く⁉︎

2016年も押し詰まってきた。今年は世界で予想外のビックリがたくさんあった。イギリスのEU離脱や、ア

記事を読む

『天気の子』 祝福されない子どもたち

実は自分は晴れ男。大事な用事がある日は、たいてい晴れる。天気予

『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』結束のチーム夫婦も前途多難⁉︎

2016年に人気だった『逃げるは恥だが役に立つ』、通称『逃げ恥

『JUNO ジュノ』ピンクじゃなくてオレンジな

ジェイソン・ライトマン監督の『JUNO ジュノ』は、エリオット

『トイストーリー4』人のお節介もほどほどに

大好きなピクサー映画の『トイストーリー』シリーズの最新作『トイ

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』言わぬが花というもので

大好きな映画『この世界の片隅に』の長尺版『この世界の(さらにい

→もっと見る

PAGE TOP ↑