『王と鳥』パクリじゃなくてインスパイア
先日テレビで放送された
『ルパン三世・カリオストロの城』(以下『カリ城』)、
いまだに人気があって、放送するたび高視聴率。
実はこの『カリ城』、
1952年のフランスアニメ映画
『やぶにらみの暴君』から大いに影響を受けている。
いや、影響を受けているというより、
殆ど城のデザインなんかや
大まかな雰囲気は同じ。
『やぶにらみの暴君』はのちに
『王と鳥』と改題され、
再編集もされている。
今は後者のタイトルの方が通じやすい。
ただフランスのこの映画、
悪役の王にものすごく感情移入しているの。
イヤなヤツにしか興味がない視点がイイ。
城の中を逃げ惑う善人の少年少女なんて
どーでもいいといったところ。
邪悪な雰囲気が全篇にあふれ、
子どもが観るには怖すぎる映画。
このエッセンスは宮崎駿監督の
『カリ城』や『ラピュタ』に色濃く反映している。
日本の作品の多くが、
まったくのゼロからのオリジナル作から
出来ていると思ったら大間違い。
名作を作った作品には、必ずと言っていい程、
ルーツとなる作品や監督が存在する。
『王と鳥』の悪夢的な部分を、
日本アニメ向けに料理したことで、
『カリ城』はパクリではなくなるのです。
エッセンスは借りても、
視点を変えれば新作となる。
『カリ城』は『ルパン三世』シリーズの劇場版第二弾。
宮崎駿監督の映画監督デビュー作でもある。
ただ当初この企画はなく、
『ルパン三世』第一作『ルパンvs複製人間』の
脚本の初稿が難航しているとき、
代案の企画として、
宮崎監督へ以来がきて出てきた企画が
『カリ城』らしい。
代案なので、宮崎監督も大急ぎで
考えたアイディアでしょう。
自分の大好きな『王と鳥』から
アイディアを捻出したのでしょう。
で、代案にしては面白いということで、
第一作がヒットしたら二作目に
『カリ城』やりましょうとなったわけらしいです。
(でもヒットしなかったみたいですが)
名作なんて、そんな些細なきっかけで
生まれるらしいです。
人生どう転ぶかわからないものです。
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