*

『戦場のメリークリスマス』 摩訶不思議な戦争映画

公開日: : 最終更新日:2021/04/29 映画:サ行

1月17日が教授こと坂本龍一さんの誕生日。
1月18日はビートたけしこと北野武さんの誕生日。
ということで『戦場のメリークリスマス』。

公開当時、自分はまだ小学生で、
「戦争映画なんて怖い」と
予告編ですら怖がっていた。

周りの小学生だった友達たちは、
こぞってタケちゃんマンが英語の
シリアスな映画に出てると大騒ぎだったが、
自分としてはYMOの坂本龍一さんと
デビッド・ボウイさんの共演の方が
エラいことなんだと感じていた。

サントラは子どもながらカッケーと思っていた。
全編シンセ音楽の戦争映画なんて、
自分の概念にはまったくなかった。

映画を観たのは中学生になってからだと思う。
淀川長治さんの映画番組でのテレビ放送。
なぜかトム・コンティさんの日本語まで
吹き返されていた。

映画を観て同性愛の映画だと知り、
チューボーの頭では理解の範疇を
既に容量オーバーしていた。

ただ不思議なもので、
最近この映画を観直したとき、
当時ローティーンの自分が観た時との
映画の印象がまったく同じだったということ。

ようするに子どもだろうが、
物事の根幹はきちんと掴めているのだなと
実感しました。

よく「お前は子どもなんだから黙ってろ!」と
親に言われて自分は育ってきました。
親の我を通そうとしてた訳ですね。

自分が親になって子ども達をみていると、
表現こそ拙いけれど、
ちゃんと本質は掴んでいるようにみえます。

子どもだからというだけで、
口を封じてはいけないということですね。
子どもから教わることもたくさんあるのです。

本作の大島渚監督は、
素人の役者を好んで起用する。
素人の役者が生み出す、
読めない演技が醸し出す化学反応を
演出意図としていたのでしょう。

坂本龍一さんの談では、
大島監督から出演のオファーが来たとき、
「音楽もやらせてくれたら出演する」と
交換条件のようなことを言ってしまって、
今となっては恥ずかしい限りだと言ってました。

そういった劇伴を手がけたことのない
作曲家も快く採用してしまう大島監督の
器量の大きさを感じずにはいられません。
『朝まで生テレビ』などで怒ってばかりの
人ではなかったのですね。

後の「世界のサカモト」、「世界のキタノ」の
将来を位置づけしたような作品でしょう。

大島監督の先見の明というよりか、
坂本さん武さんの可能性を
映画というジャンルでの
グローバルな視野を開眼させた
作品かも知れません。

メジャー配給しているけれど、
内容はアート映画。
とにかくヘンテコな戦争映画です。
それがカッコいい!!

関連記事

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

『白洲次郎(テレビドラマ)』自分に正直になること、ズルイと妬まれること

白洲次郎・白洲正子夫妻ってどんな人? 東京郊外ではゆかりの人として有名だけど、恥ずかしながら

記事を読む

no image

自国の暗部もエンタメにする『ゼロ・ダーク・サーティ』

  アメリカのビン・ラディン暗殺の様子を スリリングに描いたリアリスティック作品。

記事を読む

no image

『幸せへのキセキ』過去と対峙し未来へ生きる

  外国映画の日本での宣伝のされ方の間違ったニュアンスで、見逃してしまった名作はたく

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 +(プラス)』 推しは推せるときに推せ!

  新宿に『東急歌舞伎町タワー』という新しい商業施設ができた。そこに東急系の

記事を読む

no image

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ある意味これもゾンビ映画

『スターウォーズ』の実写初のスピンオフ作品『ローグ・ワン』。自分は『スターウォーズ』の大ファンだけど

記事を読む

『シン・ウルトラマン』 こじらせのあとさき

『シン・ウルトラマン』がAmazon primeでの配信が始まった。自分はこの話題作を劇場で

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto | Opus』 グリーフケア終章と芸術表現新章

坂本龍一さんが亡くなって、1年が過ぎた。自分は小学生の頃、YMOの散会ライブを、NHKの中継

記事を読む

no image

日本も開けてきた?『終戦のエンペラー』

  映画『終戦のエンペラー』を観た。 映画自体の出来映えはともかく、 こうい

記事を読む

no image

『百日紅』天才にしかみえぬもの

  この映画は日本国内よりも海外で評価されそうだ。映画の舞台は江戸時代。葛飾北斎の娘

記事を読む

『枯れ葉』 無表情で生きていく

アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』。この映画は日本公開されてだ

『エイリアン ロムルス』 続編というお祭り

自分はSFが大好き。『エイリアン』シリーズは、小学生のころから

『憐れみの3章』 考察しない勇気

お正月休みでまとまった時間ができたので、長尺の映画でも観てみよ

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 あらかじめ出会わない人たち

毎年年末になるとSNSでは、今年のマイ・ベスト10映画を多くの

『デッドプール&ウルヴァリン』 マルチバース、ずるい

ディズニープラスの年末年始の大目玉作品といえば、『インサイド・

→もっと見る

PAGE TOP ↑