*

『トランスフォーマー/ロストエイジ』最新技術のお披露目の場

公開日: : 最終更新日:2019/06/12 映画:タ行

ドルビーアトモスのAVアンプを探していると、この『トランスフォーマー/ロストエイジ』の見せ場の映像をよく観せられてしまう。しかしながら自分はこのトランスフォーマーシリーズがよくわからない。シリーズ全てを観ているのだけれど、やっぱりわからない。

このシリーズの特徴は、2時間半超えの超大作ということ。人気シリーズにもかかわらず、毎回睡魔との戦いになってしまうから、鑑賞前はかなり覚悟がいる。じゃあもう観るのをやめればいいじゃないって? このシリーズの映像技術に惹かれて、ついついどうしても観てしまう。トランスフォーマーは、その時最新の映画技術の真髄を試す作品なのかもしれない。

例えば最近の日本の『シン・ゴジラ』もCGを使った映画だけど、技術的には数年前のこの『トランスフォーマー』にまだまだ追いついてないかもしれない。それは制作費が『トランスフォーマー』の方が遥かにうわまっているというのもあるし、『シン・ゴジラ』の方が制作環境が潤沢ではないのもあるだろう。それでも『シン・ゴジラ』のCGの方が心に響く。どんなに環境が完璧であったとしても、そこに至るまでのモチベーションや情熱が、映像のインパクトにもろに影響してくる。

良作はテクニックだけでは生まれない。荒削りでもパワーが重要。悲しいかな、世の中には内容云々ではない映画というのも存在する。ストーリーを語るだけが映画の役割りではない。

物語上その映像がどうしても必要だから、今ある技術を駆使して誰も見たことのない映像作っていくというのが、本来なら理想的。でも今の技術を使って、ここまでできるのだと証明していくような映画もある。そんなタイプの映画にでくわしたら、観客は早々に頭を空っぽにして、素直に見たことのない映像に身を委ねてしまったほうが楽しめる。『トランスフォーマー』は、最新映画技術のカタログのような位置にあたるのかな?

なにげにこれからのマーケティングの中心は中国だと示唆してるし。

そういえば、自分の知り合いの映像クリエイターさんのほとんどが、あまり上映環境のクオリティにはこだわっていないように見受けられる。みなさん確かに誰よりも早く、どこどこの映画館にIMAXが入ったから観に行ったとか、この映画は4DXで観るのがオススメだよと、あしげく新技術の上映体験をするために遠征したりしている。レーダーは鋭い。

そのくせVHSの3倍速で撮ったようなひどい環境下の映像でも、気にせず集中して観ているようなことがある。自分だとあまりにも悪い状態の映像ならば鑑賞を諦めてしまうだろう。新技術に食いつくのは早いけど、それにこだわっている様子もないみたい。

聞いてみると、「単純に作品を観ているだけだから」らしい。どんな上映状態であれ、良い作品ならば良いに決まってる。むしろ上映環境によって、面白さが変わってしまうのでは、本当に面白い作品とは言えないのを見抜いている。ハードではなくソフトを観る。とても純粋に作品と向き合っている。

新技術に執着がないのは、自分の作品にその技術は必要ないと早々に見極めているから。もちろん自分の作品に活かせる技術であるならば、さらに突き詰めていくことだろう。

自分のようにサラウンドシステムがどうこうとか、ハイビジョンがどうこうとかこだわっているのは、やはりクリエーターではなく、ファンやマニアの視点。フォーマットばかりが気になるのは、あまりクリエイティブな鑑賞態度ではないのかも。

それでも商業作品。あらゆる角度からビジネスは広がっている。好奇心旺盛のクリエイターは、自作に使う使わないは関係なく、とりあえずは知っておこうという、アタマの柔らかい人たち。大成する人は常に勉強熱心。新しもの好きでも、突き動かすモチベーションがそもそも違う。自分もそういった冷静な態度は見習いたいものです。まったくもって脱帽です。

関連記事

『トップガン マーヴェリック』 マッチョを超えていけ

映画『トップガン』は自分にとってはとても思い出深い映画。映画好きになるきっかけになった作品。

記事を読む

『トーチソング・トリロジー』 ただ幸せになりたいだけなのにね

最近日本でもようやく意識が高まりつつあるジェンダー問題。オリンピック関係者の女性蔑視発言で、

記事を読む

『誰も知らない』とネグレクト

父親のネグレクト(育児放棄)で 5歳男児が餓死したという事件。 嫌なニュースです。考えち

記事を読む

no image

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

  配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロールズ』を選んできた。

記事を読む

『ドライブ・マイ・カー』 綺麗な精神疾患

映画『ドライブ・マイ・カー』が、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で評価されているニュースは興味

記事を読む

『チェブラーシカ』 哀愁の旧ソ連名残

なんでも5年ぶりに 新作が作られた『チェブラーシカ』。 こんどは本家ロシア産なのかな?

記事を読む

『ドライヴ』 主人公みたいになれない人生

ライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』は、カッコいいから観た方がいいとよく勧められていた。ポ

記事を読む

no image

『天才スピヴェット』所詮天才なんて、ただの個性でしかない。

  大ヒットフランス映画『アメリ』の ジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作『天才ス

記事を読む

『タイタニック』 猫も杓子も観てたの?

ジェームズ・キャメロン監督で誰もが知っている『タイタニック』の音楽家ジェームズ・ホーナーが飛

記事を読む

『トイストーリー4』 人のお節介もほどほどに

大好きなピクサー映画の『トイストーリー』シリーズの最新作『トイストーリー4』。なぜかずいぶん

記事を読む

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』 長い話は聞いちゃダメ‼︎

2024年2月11日、Amazonプライム・ビデオで『うる星や

『ケイコ 目を澄ませて』 死を意識してこそ生きていける

『ケイコ 目を澄ませて』はちょっとすごい映画だった。 最

『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ

それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

→もっと見る

PAGE TOP ↑