『ピーターパン』子どもばかりの世界。これって今の日本?
1953年に制作されたディズニーの
アニメ映画『ピーターパン』。
世代を超え、時代を超え、
自分の子どもたちも大好きな映画。
自分も幼少の頃以来久しぶりに
自分の子どもたちと観る。
何とも不思議な体験。
作品のクオリティが高いので、
今観てもなんら古さを感じさせない。
むしろ今の日本アニメの方が
ヌルい作品ばかりに感じさせる。
社会の厳しい人間関係も描いているし、
基本コメディという精神は忘れていない。
子どもの頃はネバーランドに憧れたが、
なんともはや今観ると、
現実の厳しさばかりが伝わり、
子どもばかりの社会では破綻してしまうな~
という、あまりいい印象を受けなかった。
90年代、何でもかんでも分析するのがブームになったが、
この『ピーターパン』は格好の分析材料。
「ジェネレーションX」と呼ばれた自分たちの世代は、
この『ピータパン』や『エヴァンゲリオン』と
照らし合わされてきた。
確かにこの「ネバーランド」は
現代の日本に酷似している。
ピーターパンは大人になる事を拒否し、
子どもたちのリーダーになる。
女の子たちにモテて、それをハナにかけている伊達男。
ウエンディはピーターにとって
ガールフレンドではなく、母親の象徴。
助けているようでいて実は甘えている。
この関係は『ハウルの動く城』でも描かれている。
ティンカーベル(ティンク)は嫉妬深く、
ピーターがウエンディに優しくすると、
ウエンディにイジワルをする。殺しかけたりもする。
子ども時代、ティンカーが怖かった。
人魚たちはきれいな容姿たちだけれど、
ピーターがウエンディを紹介したら、
とたんにウエンディをいじめだす。
なんとも村社会で排他的。
日本のヤンキーに近い性格だろう。
ヤンキーはある時点で
急に老成したことを言い始めるもの。
海賊たちは、大人なのにずっと精神が幼く、
子どもたちと本気でむきになって闘っている。
いわばオタクといったところ。
そして親のいないみなしごたち。
こういった子どもたちが自分たちだけの
社会を築いて崩壊して行く姿は、
戦後の日本でもなんども見せつけられている。
「浅間山荘」や「オウム真理教」などが例。
行政が競ってゆるキャラをつくったり、アニメやマンガ、
アイドルという年端もいかない少女たちに、
大の大人が夢中になっている日本。
そこには冷静さはなく、
人生のすべてのパワーを注ぎ込んでいる勢い。
ネバーランドが現実に存在するなら、
日本はまさにそれ。
当時の制作者は、
アイルランドやネイティブアメリカを
イメージしていたと思う。
ファンタジックな世界観があるからだろう。
しかしファンタジーが現実のものとなると、
何ともグロテスク。
この『ピーターパン』は子ども向けと侮ることなく、
大人社会の矛盾をそのまま描いているのです。
当時の制作者は
そこまで意図していないと思いますがね。
クライマックスでピーターは言い放ちます。
「ぼくにとっていちばん大切なのはティンクなんだ!」
女の子にモテて、誰にでも好かれようとするピーターパンが
ひとりの女の子を選び、宣言します。
とても爽快感があるシーン。
そしてティンクもその告白の後からは、
ウエンディをいじめたりすることはなくなるのです。
ひとりの伴侶を選んだこの瞬間、
ピーターは大人になったのかもしれません。
関連記事
-
-
『時をかける少女』 永遠に続く人生の忘れ物
細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が公開されるにあたり、彼の出世作である『時をかける少女
-
-
『花束みたいな恋をした』 恋愛映画と思っていたら社会派だった件
菅田将暉さんと有村架純さん主演の恋愛映画『花束みたいな恋をした』。普段なら自分は絶対観ないよ
-
-
『精霊の守り人』メディアが混ざり合う未来
『NHK放送90年 大河ファンタジー』と冠がついたドラマ『精霊の守り人』。原作は
-
-
『東京ディズニーランド』お客様第一主義の行方
自分はディズニーランドは大好きです。 子どもたちも喜ぶし、 自分も子どもみた
-
-
『カーズ/クロスロード』もしかしてこれもナショナリズム?
昨年2017年に公開されたピクサーアニメ『カーズ/クロスロード』。原題はシンプルに『Cars 3』。
-
-
『映画大好きポンポさん』 いざ狂気と破滅の世界へ!
アニメーション映画『映画大好きポンポさん』。どう転んでも自分からは見つけることのないタイプの
-
-
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』 カワイイガンダムの積年の呪い
アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が面白い。初期の『機動戦士ガンダム』は、自分は超どスト
-
-
『借りぐらしのアリエッテイ』 恋愛になる前に
昨年末、俳優の神木隆之介さんと志田未来さんの熱愛報道がスクープされた。関係者は否定したけど、
-
-
『ベイビー・ドライバー』 古さと新しさと遊び心
ミュージカル版アクション映画と言われた『ベイビー・ドライバー』。観た人誰もがべた褒めどころか
-
-
『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』人のふり見て我がふり笑え
なにこれ、おもしろい! NHK Eテレで放送しているテレビシリーズ『ひつじ