*

『死ぬってどういうことですか?』 寂聴さんとホリエモンの対談 水と油と思いきや

公開日: : 最終更新日:2021/11/15

尊敬する瀬戸内寂聴さんと、
自分はちょっとニガテな
ホリエモンこと堀江貴文さんの対談集
死ぬってどういうことですか?

寂聴さんホリエモンにキレルみたいな記事をみて
胃が苦しくなったが、
この水と油のようなお二人の対談には興味が湧いた。
しかも「死生観」についての対談。

普段避けていた存在でもあるホリエモン。
こんな機会でもなければ
彼の言葉に耳をかたむけることもなかったので、
結果的にとても良かった。

瀬戸内寂聴さんは御歳92歳。
言わずもがなものすごい恋愛経験を経て、
人生の酸いも甘いも経験して尼僧になった方。
言葉には重みがあり、説得力がある。

ホリエモンは天才。
文脈からADHDの気があるのが伺える天才。
ものすごく道理がわかってらっしゃる。
それで随所に心ないような発言がみえるのだが、
丁寧に聞いていけばどの言葉も筋が通っている。

宣伝の記事では寂聴さんとホリエモンが
口論したように感じるが、
まったくもってそんな事はなく、
お互いがお互いを尊重し、終始穏やか。

基本的に二人の意見は一致していて、
視点は違えど核心は一つなのがわかる。

二人がぶつかったようにみせて宣伝するのは間違い。
奇をてらった本編とは関係のない書評。
自分と違う意見が出た時、
「どうしてそう思うの?」と質問している。
ディスカッションはそうしてはじまるもの。
異なる意見を責めている訳ではない。

その人のインテリジェンスはこういったところにでる。
知識人はこうでなくては!

これからの日本に必要なのは、
たとえ意見の異なった相手でも、
意見を発する人を尊重し、耳を傾けて行く事。

自分と異論を放つものを排除するなんて
幼稚な発想は改めたいものです。

いろんな意見があって、はじめてディスカッションができ、
よりよい世の中へと向かって行く第一歩となるのです。

お二人の話を聞けば聞く程、
右とか左とかでは計り知れない問題が多い。

理論理屈で論破するのも違うし、
こわいこわいと感情論で冷静さを欠くのも違う。
かといって
順序だてて物事を考察して行くことは大切だし、
直感を信じることもまた大切。

この本を読んではじめてホリエモンと言う人が
なんとなく理解できたのは大きな収穫。

ホリエモンと自分は同世代。
彼の才能は本書でも十分伝わる。
凡人離れした天才です。

それゆえ欠如している部分も大きい。
それは「人との共感力」。

彼は、道理や理屈では凡人より
遥かに高い知識をもっています。

如何せん経験がともなわないので、
わからないといったところの落差が激しい。

彼も本書で語っていますが、
親にきちんと愛情を注がれてこなかったと言う事。

だからこそ自分の子どもや家族、恋人といった
「人の心」には本質的に興味がない。

そんな同世代って多いと思います。
自分も親からは上手に愛情を受けない
幼少期を送りました。

ただ自分は子ども時代寂しい思いをした分、
自分が親になった時は
子どもの話を聞ける大人になりたいと、
未来の自分に約束しました。

優秀なビジネスマンにはなれそびれたけれど、
その子どもの頃の自分との約束は
いまでも守り続けたいと思っております。

ホリエモンやヒルズ族といわれるタイプの人種とは
根本的な人生観が違うみたい。
だからこそホリエモンがニガテだったのかも知れません。

本書を読んで、このニガテ意識は
なんとなく払拭できましたけどね。

関連記事

『健康で文化的な最低限度の生活』 貧しさが先か、病が先か?

「なんか該当しそうな給付制度ありました?」 これは最近パパ友との会話で欠かせないトピック。こ

記事を読む

no image

『やさしい本泥棒』子どもも観れる戦争映画

人から勧められた映画『やさしい本泥棒』。DVDのジャケットは、本を抱えた少女のビジュアル。自分は萌え

記事を読む

『ドグラ・マグラ』 あつまれ 支配欲者の森

夢野久作さんの小説『ドグラ・マグラ』の映画版を久しぶりに観た。松本俊夫監督による1988年の

記事を読む

『アリオン』 伝説になれない英雄

安彦良和監督のアニメ映画『アリオン』。ギリシャ神話をモチーフにした冒険活劇。いまアリオンとい

記事を読む

no image

『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?

  今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長

記事を読む

no image

『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?

  明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。

記事を読む

no image

『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず

  草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…

記事を読む

no image

『NHKニッポン戦後サブカルチャー史』90年代以降から日本文化は鎖国ガラパゴス化しはじめた!!

  NHKで放送していた 『ニッポン戦後サブカルチャー史』の書籍版。 テレビ

記事を読む

no image

『とと姉ちゃん』心豊かな暮らしを

NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が面白い。なんでも視聴率も記録更新しているらしい。たしかにこ

記事を読む

no image

DT寅次郎がゆく『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場 』

  雑誌『映画秘宝』に現在も連載中の記事を再編集されたもの。普通の映画評論に飽きたら

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自

『ラストエンペラー オリジナル全長版」 渡る世間はカネ次第

『ラストエンペラー』の長尺版が配信されていた。この映画は坂本龍

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

『メダリスト』 障害と才能と

映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自

→もっと見る

PAGE TOP ↑