大人になれない中年男のメタファー『テッド』
大ヒットした喋るテディベアが主人公の映画『テッド』。
熊のぬいぐるみとマーク・ウォールバーグのコンビで
R指定と聞いて、作品の趣旨はピンと来た。
これは大人になれないおじさんを揶揄したコメディだと。
自分はこの映画の内容は観なくとも理解できた。
ここにでてくるのは自分だと。
コメディならなおのこと楽しいはずはない。
話題になればなるほど、みざるいわざるきかざる。
日本公開からしばらく経ってからこの映画を観た。
案の定、サブカル大好きで大人になりきれない男の話だった。
テッドの声もセス・マクファーレン監督自ら演じてる。
やっぱり自分と同年代だ。
ガールフレンドは必要だけど、結婚はしたくない。
責任を持ちたくない。
男友達と子どものようにきゃあきゃあ言っていたい。
あまりの大人げなさっぷりに
ガールフレンドが去ったとき、男は気づきます。
もう自分は子どもじゃないんだと。
携帯の着信音がサブカルネタだったのも、
ガールフレンドが去ってから普通の音に変わってる。
子ども心のメタファーであるテッドとも別れようとする。
そうなるとこの男とテッドの今後の展開が気になってくる。
年齢はとっくにおじさんなのに、心はずっとワルガキのまま。
いつかは卒業しなければ人生は拓けない。
ワルノリの映画かと思いきや、まっとうなテーマ。
娯楽映画なのでクライマックスには
アクションシーンが絡んでくるが、
納得のいく方向へと物語は進んで行く。
何かを捨てることによって、はじめて得るものがある。
自分も結婚なんてとんでもないとずっと思ってた人。
それが今は子どももいる。
この通過儀礼は必要不可欠だったと今は感じている。
結婚を機に、自分のサブカル趣味は限定されてしまったが、
思いもがけない面白いことが日々起こってる。
人生は予想外のことばかり。
でも最近気づいた。
自分の子どもを自分と同じ趣味の仲間にすればいいんだ。
子どもっぽい趣味も、子連れを言い訳に堂々と出来る!!
そんなことを言ったら、妻から釘を刺された。
「勉強しない子になったら困るからやめてくれ」と。
確かにサブカルに夢中になった青春時代、
自分は勉強がキライだった……。
この『テッド』もパート2がつくられるとか?
このあと大人になりきれない男たちはどうなることやら。
関連記事
-
-
『愛の渦』ガマンしっぱなしの日本人に
乱交パーティの風俗店での一夜を描いた『愛の渦』。センセーショナルな内容が先走る。ガラは悪い。
-
-
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 たどりつけばフェミニズム
先日、日本の政治家が、国際的な会見で女性蔑視的な発言をした。その政治家は以前からも同じような
-
-
『ルパン三世 ルパンvs複製人間』カワイイものは好きですか?
先日『ルパン三世』の原作者であるモンキー・パンチさんが亡くなられた。平成が終わりに近づいて、
-
-
『沈まぬ太陽』悪を成敗するのは誰?
よくもまあ日本でここまで実際にあった出来事や企業をモデルにして、作品として成立させたな~と
-
-
『とと姉ちゃん』心豊かな暮らしを
NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が面白い。なんでも視聴率も記録更新しているらしい。たしかにこ
-
-
『リング』呪いのフォーマットは変われども
『リング』や『呪怨』を作った映画制作会社オズが破産したそうです。 そういえば幼稚園頃の娘が「さ
-
-
『欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント』流行に乗らない勇気
Eテレで放送していた哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリーが面白かった。『欲望の時代の
-
-
『チェンソーマン』 サブカル永劫回帰で見えたもの
マンガ『チェンソーマン』は、映画好きにはグッとくる内容だとは以前から聞いていた。絵柄からして
-
-
『推しの子』 キレイな嘘と地獄な現実
アニメ『推しの子』が2023年の春期のアニメで話題になっいるのは知っていた。我が子たちの学校
-
-
『ツレがうつになりまして。』鬱を身近に認知させた作品
鬱病を特別な人がなる病気ではなく、 誰をもいつなりうるか分からな事を 世間に
- PREV
- 『グラン・ブルー』 ジワジワきた社会現象
- NEXT
- 『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず