ホントは怖い『墓場鬼太郎』
2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で
水木しげる氏の世界観も再評価された感がある中、
今年の『妖怪ウォッチ』の大ヒットで、
すっかり「水木妖怪」も古いものと追いやられがち。
本来妖怪は不気味で怖いもの。
水木氏の代表作と言ったら
何と言っても『ゲゲゲの鬼太郎』。
その原点となるのがこの『墓場鬼太郎』。
『ゲゲゲの鬼太郎』よりもダークで、
鬼太郎も怨念に満ちた存在で、人殺しもする。
悪い妖怪を退治するヒーローではまったくない。
時代を経て、妖怪も恐くなくなっていく。
『ゲゲゲの鬼太郎』だって、リメイクを重ねるごとに
怖さがなくなって可愛いものになっていく。
そもそも妖怪とはなんなのか?
水木氏自身、第二次大戦で片腕をなくし、
それこそ妖怪のようになって
日本へ帰ってきたと思います。
自分が3歳くらいの頃、井の頭公園で、
片腕や片足のない軍服を着た人が、
ハーモニカを吹いて物乞いを
していたのを憶えています。
「あのひと、なんなの?」と母に尋ねたと思います。
母は「かわいそうな人」と答えました。
帰還兵は負傷した体で、ろくな仕事にも就けず、
差別を受けていたと想像できます。
そんな戦争に傷つけられた人、
水木氏が受けた理不尽のメタファーとして
妖怪を扱ったのではないかと思います。
この怖い鬼太郎を完全アニメ化したのも凄い。
主題歌が電気グルーヴなのもカッコいい。
妖怪の呪いをクールに描いてる。
深夜枠で放送してた本作。
真夜中にパッと目が覚めてしまうくらい
インパクトがありました。
関連記事
-
-
『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択
先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送された。地上波放送用に、絶妙な
-
-
『村上さんのところ』村上春樹の人間力
人気小説家の村上春樹さんと 読者の交流サイト『村上さんのところ』が 話題にな
-
-
『ズートピア』理不尽な社会をすり抜ける術
ずっと観たかったディズニー映画『ズートピア』をやっと観ることができた。公開当時から本当にあちこちから
-
-
夢は必ず叶う!!『THE WINDS OF GOD』
俳優の今井雅之さんが5月28日に亡くなりました。 ご自身の作演出主演のライ
-
-
『夜明けのすべて』 嫌な奴の理由
三宅唱監督の『夜明けのすべて』が、自分のSNSのTLでよく話題に上がる。公開時はもちろんだが
-
-
『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実
公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自分もNetflixに加入してい
-
-
『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 』 若手女流監督で人生の機微が!
言わずもがな子ども達に人気の『ドラえもん』映画作品。 『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団
-
-
『DUNE デューン 砂の惑星』 時流を超えたオシャレなオタク映画
コロナ禍で何度も公開延期になっていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF超大作『DUNE』がやっと
-
-
『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!
先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之
-
-
『桐島、部活やめるってよ』スクールカーストの最下層にいたあの頃の自分
原作小説と映画化、 映画公開後もものすごく話題になり、 日本アカデミー賞を総