*

『ムヒカ大統領』と『ダライ・ラマ14世』に聞く、経済よりも大事なこと。

公開日: : 最終更新日:2019/06/13

最近SNSで拡散されているウルグアイのホセ・ムヒカ大統領のリオで行われた『環境の未来を決める会議』でのスピーチが話題になっています。消費社会に対する警鐘を鳴らしているものです。思えばいま体調不良が報道されているダライ・ラマ14世も、経済社会の問題についてよく語られています。日本の社会の形成は、経済発展や消費文化を良しとするものばかりでした。そのうえで人間性や心の問題に蓋を閉めていました。そのほころびが、現代人をかえって苦しめているようにも感じます。果たして本当の幸せとはなんなんだろう?

ムヒカ大統領のスピーチにであった時ちょうど、ダライ・ラマ14世の『傷ついた日本人へ』と『これからの日本、経済より大切なこと』という本を読んでいた。内容があまりに近かった。これから日本が進もうとしているところと、日本人が潜在的に求めているものにズレがあるのでは?と感じてしまった。

ダライ・ラマは、経済を追い求めると利己的になる。自分だけ良ければ良いという考えは、最終的には戦争へと繋がってしまうと語っています。高度成長期のように、働けば働いた分の経済的収入が得られる時代には、それでも良かったのかもしれません。人々は経済発展のため、働き詰めで家庭や人生は後回しにして来ました。それでも金銭的に豊かになったので、それは仕方がないものと考えられてきました。そして人間らしい心というものは無視されて来たのでしょう。日本の政治家達の殆どが、物事はカネで解決できると思っているのが、発言で伝わってきます。ダライ・ラマも、経済的な豊かさは、幸せとは関係がないと指摘しています。

いつも不思議に思っていたのは、政治家や大企業の重役など、一般人よりも明らかに収入が高い人に限って、更なるカネを求めて、汚いことをしてしまっているということ。ダライ・ラマの指摘では「カネは持てば持つほど不安になって、もっと欲しくなるもの」とのことらしい。そんな境地に達したことがないので、まったく想像がつかないのだが……。

人間が生きていく上で、不便でなく暮らせる程度の金銭的な豊かさというものは、それほど多額なものではないと思います。今はワーキングプアの時代。最低限、生活をしていくのに必要な収入が得られないのにもかかわらず、税金やら何やら徴収が大きいのが問題なのです。豊かな人が更に豊かになることではないのです。

自分は結婚式の式場選びのとき、エージェントが勧めてきたバブリーなオーシャンビューの式場達にはどうも興味がわかず、小さな森のチャペルが気になりました。他のゴージャスな式場より圧倒的に格安で、エージェントとしては儲けにならない。どうしてこんな小さなチャペルが良いのかわからないというエージェントの態度。結果的に選んだそのチャペルは大満足。そこは貧しい子ども達の為に作られた百年の歴史をもつものでした。結婚式のためだけに作られた新興チャペルではなかったのです。きっと派手なチャペルは自分たちには落ち着かないものだったことでしょう。

要は「高ければ良い」というものではないということ。自分好みの選び抜いた物が最低限揃っている生活の方が、より豊かだということ。よくテレビで芸能人や政治家の豪邸が紹介されますが、いいなと思うことがあまりありません。コレクションの自慢も、一人でこれを維持するのは大変だな〜と感じてしまいます。むしろそんなものを集めなければやっていけないという、心の空虚感を感じ取ってしまいます。

いま世界的に不況と言われている時代、日本だけが経済的に一人勝ちするということは、他を蹴落としたり非人道的な方向へと向かうのではないかと危惧してしまいます。武器や原発を売って一儲けしようということか? これは三人日本人がいて、一人や二人が死んでも、残った一人から「裕福になった」と言われれば良いという乱暴な考えにも思えます。死人に口無しだしちょうどいいといいうことか。

今一度、カネ中心ではなく、自分の心に耳を傾け、幸せになる為に重要なことは何なのか、じっくり考える必要がありそうです。かといってスピリチュアルに逃げ込むと、またカネの世界に引き込まれちゃう。少なくとも自分にとって「幸せ」とは、今日本で求められている裕福のイメージとはほど遠い質素なものだと感じています。

この時代に、経済だけを追い求めるのはダサいな、と思えてなりません。

 

関連記事

no image

『誰がこれからのアニメをつくるのか?』さらなる大志を抱けたら

  「日本が世界に誇るアニメ」などという手前味噌な恥ずかしいフレーズも、すっかり世の

記事を読む

no image

DT寅次郎がゆく『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場 』

  雑誌『映画秘宝』に現在も連載中の記事を再編集されたもの。普通の映画評論に飽きたら

記事を読む

『欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント』流行に乗らない勇気

Eテレで放送していた哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリーが面白かった。『欲望の時代の

記事を読む

no image

『WOOD JOB!』そして人生は続いていく

  矢口史靖監督といえば、『ウォーターボーイズ』のような部活ものの作品や、『ハッピー

記事を読む

『ヒックとドラゴン』真の勇気とは?

ウチの2歳の息子も『ひっくとどらぽん』と 怖がりながらも大好きな 米ドリームワークス映画

記事を読む

no image

『がんばっていきまっしょい』青春映画は半ドキュメンタリーがいい

  今年はウチの子どもたちが相次いで進学した。 新学年の入学式というのは 期待と

記事を読む

『わたしを離さないで』 自分だけ良ければいい世界

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリ

記事を読む

『ホドロフスキーのDUNE』 伝説の穴

アレハンドロ・ホドロフスキー監督がSF小説の『DUNE 砂の惑星』の映画化に失敗したというの

記事を読む

no image

『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?

  明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。

記事を読む

『アデル、ブルーは熱い色』 心の声を聴いてみる

2013年のカンヌ国際映画祭で最優秀賞パルムドールを受賞したフランス映画『アデル、ブルーは熱

記事を読む

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 僕だけが知らない

『エヴァンゲリオン』の新劇場版シリーズが完結してしばらく経つ。

『ウェンズデー』  モノトーンの10代

気になっていたNetflixのドラマシリーズ『ウェンズデー』を

『坂の上の雲』 明治時代から昭和を読み解く

NHKドラマ『坂の上の雲』の再放送が始まった。海外のドラマだと

『ビートルジュース』 ゴシック少女リーパー(R(L)eaper)!

『ビートルジュース』の続編新作が36年ぶりに制作された。正直自

『ボーはおそれている』 被害者意識の加害者

なんじゃこりゃ、と鑑賞後になるトンデモ映画。前作『ミッドサマー

→もっと見る

PAGE TOP ↑