*

『アメリカン・ビューティー』幸福か不幸か?

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 映画:ア行

t02110299_0211029913277647583

アカデミー賞をとった本作。最近ではすっかり『007』監督となった映像派のサム・メンデス監督のデビュー作。家族が崩壊して行く姿を描く悲喜劇。登場人物全員が、なにがしかの鬱屈を抱え、満たされない日常を送っている。すばらしい脚本。この脚本はそもそも戯曲だったそうです。脚本家のアラン・ポールが、寒い日に風に舞うコンビニ袋にみとれていたらこの物語の構想が一気に浮かんだそうです。とてもアーティスティックなエピソードです。その風に舞うコンビニ袋は、映画の中でも象徴的に再現されています。

昨今の映像作品では、人物がきちんと描かれていないものが多く、ここまで登場人物一人ひとりが切実に描かれている作品は稀。仮に人物が描かれていている良質な作品はあったとしても、映像が弱かったりするのだが、この『アメリカン・ビューティー』は映像も見事。故コンラッド・ホールの撮影はどこをとってもポストカードのような美しさ。

アメリカン・ビューティーとはバラの名前。深紅のバラが象徴的に画面に配される。そして崩壊していく主人公の家の玄関のドアも同じ深紅。静けさの中に激しさを孕んだ、心理的な映像表現。映画というのはこういうものなのだとみせつけられる。なにか映画の神様のような大いなるものが力を貸して、映像化を祝福しているのではないかと思えてしまうほど、すべての映像哲学がしっくりハマっている。

そういえば公開当時通っていた英会話教室で、この作品の主人公は幸せか不幸かって話題をオーストラリア人の講師が振って来た。共感した内容で会話した方が、会話力が数段アップするのは分かっていたけど、日本人で映画について人生観を語ろうという人にあまり出くわしたことがない。日本人はそれほどに自分の人生にすら興味がないのかもしれない。自分は何もかもうまくいかないダメダメな主人公は不幸だと言ったが、オーストラリア人講師は「彼は幸せだよ」と言っていた。最後の最期に人生でもっとも大切なものに気づけたからって。ポジティブシンキング。これは見習わなくては!

この『アメリカン・ビューティー』という映画は、ハイテクなのにハートがある。奇跡の映画ではないだろうか。

関連記事

『アベンジャーズ』和を重んじるのと、我慢は別

マーベルコミックスのヒーローたちが大集合する オタク心を鷲掴みにするお祭り映画。 既

記事を読む

モラトリアム中年の悲哀喜劇『俺はまだ本気出してないだけ』

『俺はまだ本気出してないだけ』とは 何とも悲しいタイトルの映画。 42歳の中年男が突

記事を読む

それを言っちゃおしまいよ『ザ・エージェント』

JERRY MAGUIRE, Tom Cruise, Jonathan Lipnicki, 199

記事を読む

『オール・ユー・ニード・イズ・キル 』日本原作、萌え要素を捨てれば世界標準

じつに面白いSF映画。 トム・クルーズのSF映画では 最高傑作でしょう。 死んだら

記事を読む

母子家庭の不安のメタファー『E.T.』

今日はハロウィン。 自分はこの時期『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』より 『E.T.』

記事を読む

ワーカホリックという病『アメリカン・スナイパー』

365日24時間いつでもご用命ください。不眠不休で対応致します。 なんとも頼もしい言葉

記事を読む

『思い出のマーニー』好きと伝える誇らしさと、因縁

ジブリ映画の最新作である『思い出のマーニー』。 自分の周りでは、女性の評判はあまり良くなく

記事を読む

TOHOシネマズ新宿OPEN!!『うる星やつら オンリー・ユー』

TOHOシネマズ新宿が4月17日に オープンするということで。 都内では最大級のシネコン

記事を読む

『アバター』観客に甘い作品は、のびしろをくれない

http://edition.cnn.com/2010/SHOWBIZ/Movies/01/11/

記事を読む

人を幸せにしたいなら、まず自分から『アメリ』

ジャン=ピエール・ジュネ監督の代表作『アメリ』。 ジュネ監督の今までの作風といえば

記事を読む

『やさしい本泥棒』子どもも観れる戦争映画

http://video.foxjapan.com/release/

『君たちはどう生きるか』誇り高く生きるには

今、吉野源三郎著作の児童文学『君たちはどう生きるか』が話題にな

『ラースと、その彼女』心の病に真摯に向き合ったコメディ

いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの人気者になったライアン・ゴズリング。

『メッセージ』ひとりが幸せを感じることが宇宙を変える

http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/

『ハイドリヒを撃て!』実録モノもスタイリッシュに

http://shoot-heydrich.com/[/captio

→もっと見る

PAGE TOP ↑