*

それを言っちゃおしまいよ『ザ・エージェント』

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ア行, 映画:サ行

社会人として働いていると「それを言っちゃおしまいよ」という場面は多々ある。効率や人道的な部分で、これは間違ってはいるのだけれど、もしそこに触れてしまっては商売が成り立たなくなってしまう。殆どの人が気づいはいるものの、改善改革をしてしまう訳にはいかないものがある。白と黒の間、グレーゾーンで世の中は成り立っている。『ザ・エージェント』という映画の主人公ジェリー・マクガイアは、一流スポーツ・エージェントでその会社の矛盾に切り込んでいく。

この映画の原題は『Jerry Maguire』。主人公の名前がズバリタイトルになっている。邦題は『ザ・エージェント』という職業がタイトルになっているけど、これ『ジ・エージェント』じゃないのは何か意味があるのかなあ?

主人公のジェリーは一流スポーツ・エージェントしてノリにノっている。将来も順風満帆を約束されている。ある日、仕事の矛盾点に気づき、もっと人間的な仕事をするべきだと、会社にシステムを根底から変えるべきという提案書を、憑かれたかのごとく書き上げ全社員に配布する。ジェリーは正義感に燃え、これで会社も世の中も良い方向に向かうと信じて突き進む。そのレポートを出した翌朝、ジェリーは同僚達から拍手で迎えられる。そして解雇通告。組織の触れてはいけないところへ口を挟んでしまったからだ。会社からしてみればジェリーの行動は背信行為そのもの。これ、映画が始まって5分もたたないエピソード。まだスタッフ紹介のテロップが流れてる。

ジェリーが会社を追われるところからこの映画が始まる。挫折がすべての始まり。

この映画のアツい主人公ジェリー・マクガイアを演じるトム・クルーズに、自分はもの凄く感情移入してしまった。そしてジェリーを追い込む元同僚たちにすら愛情混めた演出をするキャメロン・クロウ監督も見事。ビリー・ワイルダーに大きく影響を受けたキャメロンの演出は、愛に満ちあふれている。この映画以降、自分はトム・クルーズとキャメロン・クロウの大ファンになってしまった。

ジェリーは仕事を通して、人と出会い、結婚しパパにもなる。仕事中心になり、家族がすれ違い苦しむ。その姿がとてもいい。
恋愛ものは数あれど、ほとんどが二人が結ばれたり別れたりすることで完結するのだが、この映画は二人が結婚した後の生活に重きをおいている。仕事と家族というテーマはとても普遍的にも関わらず、地味故にあまり作品で描かれることはない。本当は人生にとっては、結ばれた後の方が大事だったりもする。

「You complet me.(君は僕を完全にする)」という名台詞がこの映画に登場します。脚本も手がけるキャメロン・クロウは、こういったさまざまな意味が取れる曖昧な言葉をあえてキーワードにして映画の仕掛けに使う。なんとも知的な言葉遊び。

人生に大切なものはなんなのか。映画を観てほんわかな気持ちになりながら考えさせられる名作です。

関連記事

『戦場のメリークリスマス』 摩訶不思議な戦争映画

1月17日が教授こと坂本龍一さんの誕生日。 1月18日はビートたけしこと北野武さんの誕生日

記事を読む

no image

オカルト? カルト?『オーメン』

  6月6日はダミアンの誕生日だ!! と最近言わなくなった。もう『オーメン』の話をし

記事を読む

『いだてん』近代日本史エンタメ求む!

大河ドラマの『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』の視聴率が伸び悩んでいるとよく聞く。こちらと

記事を読む

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 たどりつけばフェミニズム

先日、日本の政治家が、国際的な会見で女性蔑視的な発言をした。その政治家は以前からも同じような

記事を読む

『エクス・マキナ』 萌えの行方

イギリスの独立系SFスリラー映画『エクス・マキナ』。なんともいえないイヤ〜な後味がする映画。

記事を読む

『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』映画の終焉と未来

『スターウォーズ』が終わってしまった! シリーズ第1作が公開されたのは1977年。小学

記事を読む

『インクレディブル・ファミリー』ウェルメイドのネクスト・ステージへ

ピクサー作品にハズレは少ない。新作が出てくるたび、「また面白いんだろうな〜」と期待のハードル

記事を読む

『エターナルズ』 モヤモヤする啓蒙超大作娯楽映画

『アベンジャーズ エンドゲーム』で、一度物語に区切りをつけたディズニー・マーベルの連作シリー

記事を読む

『サウンド・オブ・ミュージック』 さらに高みを目指そう!

先日行われた息子の幼稚園の発表会の演目は『サウンド・オブ・ミュージック』だった。自分が生まれ

記事を読む

no image

『ズートピア』理不尽な社会をすり抜ける術

ずっと観たかったディズニー映画『ズートピア』をやっと観ることができた。公開当時から本当にあちこちから

記事を読む

『ウィキッド ふたりの魔女』 陰惨な世界を軽やかに歌い上げよう

観るべきかやめるべきか迷っていた映画『ウィキッド ふたりの魔女

『ひらやすみ』 とがって、たたかれ、まるくなり。

2025年の冬、自分のSNSのタイムラインでは『ひらやすみ』と

『プレデター バッドランド』 こんなかわいいSFアクション映画が観たかった

『プレデター』の最新作が公開される。近年日本では洋画が不人気。

『藤本タツキ 17-26』 変態宣言を強要する珠玉のアニメ短編集!

『チェンソーマン』は、期待してなかったにも関わらず意外とハマっ

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』 こうしてすべてが変わっていく

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』という映

→もっと見る

PAGE TOP ↑