*

『ラストエンペラー』で近代史に興味がわいた

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ラ行, 音楽

イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』。西洋人が描く東洋の歴史。この映画を観たのは自分が中学生の頃。当時、アジアはダサいものと決めつけていた自分に目からウロコの作品だった。まあ実際には西洋人の美意識で相当ロマンチックに盛られたアジアの姿なのだが、西洋人がこうしてアジアを尊重している姿がとても嬉しかった。

映画の主人公は実在した中国最後の皇帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)。3歳で中国皇帝になり、一般の庭師として生涯を閉じる。人生の間には第二次世界大戦もあり、満州国の傀儡皇帝になったりと、日本の近代史にも大きく関わっている。

中学生の自分はベルトルッチの以前の作品もしらないし、当時から大ファンだった坂本龍一氏が音楽と役者としてクレジットされているのが最大の魅力だった。友人と初日に観に行く約束をしていたのだが、友人が第二回目の上映時間でないと行けないと言われたので、せっかちな自分は待ちきれず、ひとりで第一回上映を観に行ってしまった。映画を観終わって帰るとき、次の回の上映を待つ行列に友人達を発見。「どうだった?」の声に「最高だったよ!」と返しました。昨年閉館になった新宿ミラノ座での上映でした。

映画『ラストエンペラー』の中で描写される南京事件のくだりは、当時も話題になり、日本公開用に配慮された編集版が公開されたが、当時の自分にはよくわからなかった。むしろ南京事件の場面なんてあったのかな?というくらい印象に残らなかった。

ベルトルッチ監督の右腕、撮影監督のヴィットリオ・ストラーロの撮影は素晴らしく、実在の中国の紫禁城の場面ですらSF映画の別世界のように神秘的に撮影されている。もうそれだけで感動。ストラーロは「光と影の魔術師」と言われるほどの伝説の撮影監督。イタリア映画は撮影が綺麗なのは特徴だが、とくに神がかった映像が10代の自分の眼前に繰り広げられた。もうカッコ良過ぎた。

この映画を観てから自分は近代史を調べるようになった。遠くの存在だった戦争も、もっと身近に感じられるようになった。そして多感な10代に、ここまで芸術的な歴史絵巻に出会えたことで、審美眼を肥えさせてもらったような気がする。ベルトルッチという芸術家の目を通して、アジアの神秘や素晴らしさを紹介してもらった。アジアはダサいなんて前言撤回。アジアはカッコいい!!

このあとベルトルッチはこの『ラストエンペラー』を第一作に「オリエンタル三部作」を展開していきます。スタッフも殆ど一緒、坂本龍一氏も全作の劇伴を担当しています。

10代の頃、20回は観たであろう『ラストエンペラー』。CG全般になった現在の映画環境では、なかなかこれほどのスケールのデカい作品は作られなくなったことでしょう。思い出深い作品です。

関連記事

no image

『ドリーム』あれもこれも反知性主義?

  近年、洋画の日本公開での邦題の劣悪なセンスが話題になっている。このアメリカ映画『

記事を読む

no image

『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリーのよう

記事を読む

『ボヘミアン・ラプソディ』共感性と流行と

昨年はロックバンド・クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットが社会現象となった

記事を読む

no image

『アバター』観客に甘い作品は、のびしろをくれない

ジェイムズ・キャメロン監督の世界的大ヒット作『アバター』。あんなにヒットしたのに、もう誰もそのタイト

記事を読む

no image

『幸せへのキセキ』過去と対峙し未来へ生きる

  外国映画の日本での宣伝のされ方の間違ったニュアンスで、見逃してしまった名作はたく

記事を読む

no image

『レクイエム・フォー・ドリーム』めくるめく幻覚の世界

  「シェシェシェのシェー」と叫びながら隣人女性に危害を加えて捕まった男がいましたね

記事を読む

no image

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』顛落の悲劇。自業自得か殉教者か?

  問題作すぎて新作『ニンフォマニアック』の 日本公開も危ぶまれながらもうじき公開

記事を読む

no image

『DENKI GROOVE THE MOVIE?』トンガリ続けて四半世紀

  オフィス勤めしていた頃。PCに向かっている自分の周辺視野に、なにかイヤなものが入

記事を読む

no image

『アトミック・ブロンド』時代の転機をどう乗り越えるか

シャーリーズ・セロン主演のスパイ・アクション映画『アトミック・ブロンド』。映画の舞台は東西ベルリンの

記事を読む

no image

『うつヌケ』ゴーストの囁きに耳を傾けて

  春まっさかり。日々暖かくなってきて、気持ちがいい。でもこの春先の時季になると、ひ

記事を読む

『アナと雪の女王2』百聞は一見にしかずの旅

コロナ禍で映画館は閉鎖され、映画ファンはストレスを抱えているこ

『斉木楠雄のΨ難』生きづらさと早口と

ネット広告でやたらと『斉木楠雄のΨ難』というアニメを推してくる

『コンテイジョン』映画は世界を救えるか?

知らないうちに引退宣言をしていて、いつの間に再び監督業に復帰し

『欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント』流行に乗らない勇気

Eテレで放送していた哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリ

『ブラックパンサー』伝統文化とサブカルチャー、そしてハリウッドの限界?

♪ブラックパンサー、ブラックパンサー、ときどきピンクだよ〜♫

→もっと見る

PAGE TOP ↑