『エリン・ブロコビッチ』シングルマザーに将来はないのか?
公開日:
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最終更新日:2019/06/14
映画:ア行
日本の6人に1人が貧困家庭の子どもだそうです。
先日テレビで特集が再放送されていました。
先進国で世界的にみて、子どもの貧困率は
もちろんアメリカがワースト1なのですが、
日本はワースト3に位置している。
これはかなり深刻な問題。
子どもをみてもひと目では
この格差はわからないそうです。
大抵シングルマザーの家の子が
貧困に苦しんでいるそうです。
そういった家庭を守るシステムがまだ
日本ではそれほど整っていないというのも現実。
国や行政も追いつかないから、
「シングルマザーになる方が悪い」
みたいな乱暴な扱いをしてしまう。
ただ母子家庭の殆どが
なりたくてなった訳ではない。
父親の死別もあるだろうが、
DVによって別れなければ殺される状況だってある。
この番組ではそういった
貧困家庭の取材がされていた。
一つ目は、絵の専門学校に進みたい高校生の女の子。
家が貧しいので進学を諦め就職するそうで、
NPOの人が「希望をなくさないように話し合います」
と言っていたが、自信なさげだった。
でも待って!
どんな種類の絵の仕事に
就きたいかわからないけど、
絵で食べて行くのは、
いばらの道なのはさておいても、
資格のない職業なので、
その子は一刻も早く現場に出て働いた方が良い。
専門学校で頭でっかちになるくらいなら、
現場でもまれた方が、勉強しながら給料ももらえる。
そう導いてあげられればいいのに。
学校へ行くことがすべてじゃない。
もう一つはやはり母子家庭で
4人の子どもがいる家庭。
いちばん上の男の子が17歳なのだが、
家の貧しさでいじめに遭い、
引きこもりになってる。
イヤイヤ、引きこもってる場合じゃないでしょ。
働いてお母さんを助けなきゃ。
これはお母さんも子どもに
助けを求めていないんだと思う。
子どもを不憫だと思い、
すべての悪因は己にあると、
なにもかも背負い込んでしまった結果だろう。
この場合は子どもたちと対峙して、
「ウチはよそのウチと違って貧しい。助けてくれ」と
息子が引きこもりになる前に
話し合うべきだったのかも知れない。
日本人はとかく自分のせいと、
不幸を耐え忍んでしまう傾向がある。
だが辛かったら視点を変える必要もあるのではないか?
現状を棚卸しする必要があるのではないか?
うまく行かない人は、
自分で背負い込む傾向があるらしい。
頼み上手な人がけっこう成功しているものだ。
で、やっと映画紹介。
『エリン・ブロコビッチ』は主人公の名前。
彼女は小さな子どもを3人抱えたシングルマザー。
キャリアといえば以前
ミスコンで優勝したことくらい。
でも美人というだけでは、生活の糧にはならない。
彼女は弁護士事務所に強引に就職し、
工場が流す不正廃棄物で苦しんでいる
町を救おうとガッツで闘って行く。
これは実話を基にした映画だし、
登場する名称はすべて実名。
ここはアメリカの凄いとこ。
スティーブン・ソダーバーグの
アーティスティックな演出が、
とかくど根性で空々しい美談に
なりそうな素材をクールに料理している。
まさに映画の神様が
味方についた作品だろう。
エリンもまた不幸のまっただ中で
生活しているところからスタートしている。
彼女は決して悲観的にならない。
困難を一つひとつ乗り越えていくのだが
そこには悲壮感はない。
明るく前へ進んで行く。
そして協力者が増えていき、
きちんとその協力に甘んじる。
物事は自分一人の力だけでは
決して成し遂げられない。
宿命は変えられないけど、
運命は自分の意志できっと変えられる。
それを教えてくれる映画。
女性が活躍している映画は気持ちがいい。
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