*

『ベイマックス』 涙なんて明るく吹き飛ばせ!!

公開日: : 最終更新日:2021/08/17 アニメ, 映画:ハ行

お正月に観るにふさわしい
明るく楽しい映画『ベイマックス』。

日本での宣伝のされかたが
兄弟を描いた作品のようだが、
実は主人公の兄を通して知り合った
仲間との友情のお話。

ある日、ロボットが現れ、友達とともに冒険する。
これって『ドラえもん』の大長編ものと同じ流れ。

ただ『ドラえもん』と違うのは、主人公ヒロが
天才的なロボテックの知識を持っている
才能豊かな少年であること。
のび太と違ってヘタレではない。
そこがアメリカ的。

そして原作はマーベルなので、やはりヒーローもの。
いまマーベルはディズニー傘下。
本格的なマーベルマインドはきちんと受け継いでいます。

近年のSFファンタジーの要素をふんだんに取り込んで、
イノベーションしている。
その要素は日本のサブカルだけに留まっていない。
ディズニーのライバル会社・ドリームワークスの
『ヒックとドラゴン』のテイストすら感じてしまう。

この作品、自分の周囲では「泣けた」という声をたくさん聞いた。
自分は泣きが売りのエンターテイメントはどうも苦手なので
ちょっと心配しつつの鑑賞。

そんな不安も吹っ飛ぶくらいの明るい映画だった。

確かに泣ける場面もあるのだが、
ディズニーが世界の子ども達に向けている作品で、
辛気くさい終わり方はするはずがないと信じて、
どうやって爽快感あるラストに結んでむすんでいくのか
とても気になった。

期待を裏切らない脚本に感心。

最近の日本人はすぐ「泣く」方向へ行ってしまうのは、
現状がかなり辛いということの現れではないか?

お涙頂戴路線で売ろうとしたのは
ディズニーの判断だろう。
悲劇性が高い方が日本ではヒットすると。
なんだかバカにされてる感じ。
間違ってないからなお悔しい。

思うのだが、最近日本の作品では
登場人物の死が予告編の段階でバラして
その死が売りになっているような気がする。
この10年で難病もののなんて多いことか。

本作では主人公ヒロの兄タダシがそれに当たる。
だからてっきりタダシは冒頭に死ぬのだと
思っていたのだが、ヒロとタダシの場面がとても長い。

そして登場人物の紹介場面がものすごく丁寧。
テンポが悪くなるくらい、冒頭で時間をさく。
登場人物の名前と顔、特徴をぜんぶ覚えられるほど丁寧。

そう、そこがミソ。
この映画の原題は『ビッグヒーロー6』。
6人の仲間が、兄タダシの死をきっかけに
各々の特技を使ってスーパーヒーローになる話なのだ!!

だからむしろ兄タダシの死を事前に知らない方が
この作品を楽しめると思う。
突然の事故で家族を失うというのは
アメリカでは同時多発テロをすぐ連想させる。

最愛の家族の突然の死だからこそ意味がある。

兄タダシは生前、人の役に立つロボットを
作りたくてベイマックスを誕生させる。

なにせ天才兄弟なので、
ヒロもベイマックスを初見で機械的構造を理解する。

ヒロによってパワーアップされていくベイマックス。
最初はゆるキャラのような可愛らしかったベイマックスが
アーマードスーツを装着した瞬間、カッコ良くなる。

ヒロは技術的には兄タダシを凌駕するほどの
技術を持っているのかもしれない。
でもタダシはただのロボットを作りたかった訳ではない。
タダシは「人の役に立ちたい心」を持つロボットを作ったのだ。

どんなに技術や才能があっても、
「心」がなければ悪用されてしまう。

正義感ゆえ、早死にしてしまったタダシだが、
人間の本当に大切な「心」の存在を
ヒロにベイマックスを通して伝えていく。

いま、本当の幸せとは何かを問われている時代。
満たされた人生を送っている人ほど
人生に執着はないように感じます。

利他の心の大切さを主題にしながらも、
明るく軽く、爽快感溢れる
アクション映画に仕上がっています。

ポジティブパワー全開!!

関連記事

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 あらかじめ出会わない人たち

毎年年末になるとSNSでは、今年のマイ・ベスト10映画を多くの人が発表している。すでに観てい

記事を読む

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

no image

『ルパン三世(PART1)』実験精神あればこそ

  MXテレビで、いちばん最初の『ルパン三世』の放送が始まった。レストアされて、もの

記事を読む

『鬼滅の刃』親公認!道徳的な残虐マンガ‼︎

いま、巷の小学生の間で流行っているメディアミックス作品『鬼滅の刃』。我が家では年頃の子どもが

記事を読む

『機動戦士ガンダムUC』 小説から始まり遂に完結!!

2010年スタートで完結まで4年かかった。 福井晴敏氏の原作小説は、遡る事2007年から。

記事を読む

『借りぐらしのアリエッテイ』 恋愛になる前に

昨年末、俳優の神木隆之介さんと志田未来さんの熱愛報道がスクープされた。関係者は否定したけど、

記事を読む

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 そこに自己治癒力はあるのか?

自分はどストライクのガンダム世代。作家の福井晴敏さんの言葉にもあるが、あの頃の小学生男子にと

記事を読む

『思い出のマーニー』 好きと伝える誇らしさと因縁

ジブリ映画の最新作である『思い出のマーニー』。 自分の周りでは、女性の評判はあまり良くなく

記事を読む

『名探偵ピカチュウ』日本サブカル、これからどうなる?

日本のメディアミックス作品『ポケットモンスター』を原作に、ハリウッドで製作された実写映画『名

記事を読む

no image

『ルパン三世 カリオストロの城』これって番外編だよね?

  『ルパン三世』が30年ぶりに テレビシリーズになるとのことで。 数年前か

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自

『ラストエンペラー オリジナル全長版」 渡る世間はカネ次第

『ラストエンペラー』の長尺版が配信されていた。この映画は坂本龍

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

『メダリスト』 障害と才能と

映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自

→もっと見る

PAGE TOP ↑