*

『東のエデン』事実は小説よりも奇なりか?

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 アニメ, 映画:ハ行

 

『東のエデン』というテレビアニメ作品は
2009年に発表され、舞台は2011年の近未来(当時)。

脚本監督はテレビ版の
『攻殻機動隊』シリーズの神山健治氏。

SFサスペンスアクションでありながら、
キャラクターデザインは
『ハチミツとクローバー』や『三月のライオン』の
少女マンガ家さんの羽海野チカ氏。

硬派なSFアニメ作家と少女マンガ家の
一見ミスマッチなコラボ。
そこにこの作品の妙がある。

放送されたのはフジテレビの深夜で、
『ノイタミナ』というアニメ専門枠。

通常アニメは男が観るもので、
いちばん観ないであろう若い女性も
観客に巻き込もうとしたアニメ放送枠。

一話の脚本には映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の
伊藤ちひろ氏が当時20代の感性で参加している。
女の子目線が作品にビビッドに反映されていた。
『王子様を拾ったよ』という一話のタイトルも良い。

主題歌はOASISだったのも、洋楽ファンとしては意外だった。

物語が本当に面白く、これから何が起こるのだろうと、
しょっぱなからワクワクさせられる。

内容は、100億円を自由に使って、
日本の閉塞感を救うゲームに
強制参加させられる主人公たちの姿をみせられる。
このゲームの敗者は全員殺されると予告されている。

大金があれば何でもできてしまう爽快さ、
そして人生を狂わせる者、あえて何もしない者、
命を落とす者、策略に走る者、人それぞれ。

ニート、拝金主義、軍事、携帯のアプリ……。
かなり現実の日本とシンクロするキーワードが
作品のあちこちに散りばめられている。

本作では2010年に日本に10発のミサイルが
打ち込まれたという設定がある。

奇しくも2011年3月11日、
東北地方太平洋沖地震が発生し、
福島では未曾有の津波、原発事故が起こり、
このアニメの世界観よりも
閉塞感のある日本となってしまった。

作品は硬派で重いのだが、少女マンガのタッチなので
どこかふわふわした甘い雰囲気が、
オブラートに包んでくれて、いい味をだしていた。

不健康なアニメが多い昨今、
女性にもアニメを観てもらいたいと
制作側が冒険する姿勢にはとても好感が持てた。

従来の男性のアニメファンにとっても、
普段アニメを観ない女性にとっても、
新感覚の作品だったことでしょう。

関連記事

no image

『怪盗グルーのミニオン大脱走』 あれ、毒気が薄まった?

昨年の夏休み期間に公開された『怪盗グルー』シリーズの最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』。ずっとウチ

記事を読む

『うる星やつら オンリー・ユー』 TOHOシネマズ新宿OPEN!!

TOHOシネマズ新宿が4月17日に オープンするということで。 都内では最大級のシネコン

記事を読む

『うる星やつら 完結編』 非モテ男のとほほな詭弁

2022年の元日に『うる星やつら』のアニメのリメイク版制作の発表があった。主人公のラムが鬼族

記事を読む

no image

『鉄道員』健さんなら身勝手な男でも許せちゃう?

  高倉健さんが亡くなりました。 また一人、昭和の代表の役者さんが逝ってしまいまし

記事を読む

『魔女の宅急便』 魔法に頼らないということ

ウチの子どもたちも大好きなジブリアニメ『魔女の宅急便』。 実はウチの子たちはジブリアニ

記事を読む

『ベルリン・天使の詩』 憧れのドイツカルチャー

昨年倒産したフランス映画社の代表的な作品。 東西の壁がまだあった頃のドイツ。ヴィム・ヴェン

記事を読む

no image

王道、いや黄金の道『荒木飛呂彦の漫画術』

  荒木飛呂彦さんと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの漫画家さん。自分は少年ジ

記事を読む

no image

『ファイト・クラブ』とミニマリスト

最近はやりのミニマリスト。自分の持ちものはできる限り最小限にして、部屋も殺風景。でも数少ない持ちもの

記事を読む

『この世界の片隅に』 逆境でも笑って生きていく勇気

小学生の頃、社会の日本近代史の授業で学校の先生が教えてくれた。「第二次大戦中は、今と教育が違

記事を読む

『ひろしま』いい意味でもう観たくないと思わせるトラウマ映画

ETV特集で『ひろしま』という映画を取り扱っていた。広島の原爆投下から8年後に製作された映画

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑