*

『借りぐらしのアリエッテイ』 恋愛になる前に

公開日: : 最終更新日:2021/06/05 アニメ, 映画:カ行

昨年末、俳優の神木隆之介さんと志田未来さんの熱愛報道がスクープされた。関係者は否定したけど、世の中はこの可愛らしいカップル誕生に応援の声があがっていた。若いタレントさんのゴシップで、好意的な声が聞こえるのは最近では珍しい。まったくもって他人の恋愛に口を出すことなんて無粋なこと。第三者がとやかく言うことではない。それに役者だろうがタレントだろうがみんな同じ人間。ある程度の年齢がきたらそれなりに恋愛のひとつやふたつ経験していない方がマズい。ときには恋愛に失敗して、深く傷つくのだって人生のスキル。大人ならなおのこと当事者同士の問題。他者が感情的に責めるような態度はカッコ悪い。なので、神木&志田カップルが実際だったらステキだな~、暖かく見守りたいな~と思える人が多いことに久々にほっこりした。

役者さん同士のカップルが誕生するときは、たいていは良作での共演がキッカケ。名作が生まれる現場の雰囲気も良いということだろう。で、この二人の共演作で真っ先に浮かんだのが、スタジオジブリ昨品の『借りぐらしのアリエッテイ』。小人族の娘・アリエッテイと、病弱な少年・翔の異種族の若い男女が出会って、心が触れ合って、別々の道へと進んでいく。事象としては何も起こらない、ただすれ違うだけの出会い。その恋愛に発展しそうで先へ進まないという、ジブリ定番のセンチメンタリズム。

ジブリ作品は、直接的な性描写はなくともエロティックだとよく言われる。体のつながりより心のつながりに重点が置かれて描かれているからだろう。心という目に見えないところでのつながり。具体的ではないので、もしかしたら誤解かも知れないという危うさ。目に見えないものであるからこそ、子どもでも感情移入できる。上品な恋愛表現。ジブリ作品はアニメ作品というより、普通の映画として観ている人が多いのも、この情緒に所以しているのだろう。

ただ、この目に見えない危うさ故に、妄想に暴走してしまう危険性もなきにしも。この『借りぐらしのアリエッテイ』の完成会見のとき、共演のふたりが、ホントにふわ~っとしているような印象を受けた。一歩間違えば娯楽作品は、現実の人生に悪影響を与えてしまう。だからこそ、共演のふたりが実際にカップルになれたらいいなと思わせるのかも知れない。それはまさに現実が作品を超えるとき。すれ違ったアリエッテイと翔の物語の続きが、現実に続いていく錯覚。

本作の原作は、イギリスの児童文学『床下の小人たち』。メアリー・ノートンの小説は、映画版よりドライで恋愛要素はほとんどない。おばあちゃんが孫に、弟から聞いた小人たちの話を伝えきかせる。その弟が映画版の翔にあたる。彼はすでに戦死していて、虚言癖があったとまで言われてる。アリエッテイとの出会いは、現実から遥か遠い。でもこの小人シリーズはこれから数作書かれていくから、アリエッテイは存在していたってことになるのかな?

ジブリ映画になったら、恋愛要素に重きが置かれるのがなかなか日本的。ジブリ映画は、原作ありでもほとんどの作品がオリジナルなストーリー。たいてい拝借しているのは、設定やエッセンスのみ。借りぐらしというエコな生き方が時代性を感じた。たくましくサバイブしている小人たちにも見習うものがあった。でもそろそろ甘いセンチメンタリズムからは卒業して、個々が自分の責任で現実に向き合わなければいけなくなってきたようにも感じる。情緒に浸るのもいいけど、それで足元が見えなくなったら本末転倒。

なんとなく今という時代は、価値観の変換期にきているような気がする。ちょうどスタジオジブリも新作制作は休止中だし。各々が自分の人生観を見直す時期がきているのかも知れない。

関連記事

『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』 映画鑑賞という祭り

アニメ版の『鬼滅の刃』がやっと最終段階に入ってきた。コロナ禍のステイホーム時期に、どうやって

記事を読む

『きっと、うまくいく』 愚か者と天才の孤独

恵比寿にTSUTAYAがまだあった頃、そちらに所用があるときはよくその店を散策していた。一頭

記事を読む

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 野心を燃やすは破滅への道

今年2023年の春、自分は『機動戦士ガンダム』シリーズの『水星の魔女』にハマっていた。そんな

記事を読む

『ゴーストバスターズ アフターライフ』 天才の顛末、天才の未来

コロナ禍真っ只中に『ゴーストバスターズ』シリーズの最新作『アフターライフ』が公開された。ネッ

記事を読む

no image

『クラフトワーク』テクノはドイツ発祥、日本が広めた?

  ドイツのテクノグループ『クラフトワーク』が 先日幕張で行われた『ソニックマニア

記事を読む

『インクレディブル・ファミリー』ウェルメイドのネクスト・ステージへ

ピクサー作品にハズレは少ない。新作が出てくるたび、「また面白いんだろうな〜」と期待のハードル

記事を読む

『東京卍リベンジャーズ』 天才の生い立ちと取り巻く社会

子どもたちの間で人気沸騰中の『東京卍リベンジャーズ』、通称『東リベ』。面白いと評判。でもヤン

記事を読む

『マッドマックス フュリオサ』 深入りしない関係

自分は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が大好きだ。『マッドマックス フュリオサ』は、そ

記事を読む

no image

イヤなヤツなのに魅力的『苦役列車』

  西村堅太氏の芥川賞受賞作『苦役列車』の映画化。 原作は私小説。 日本の人

記事を読む

『君の名前で僕を呼んで』 知性はやさしさにあらわれる

SF超大作『DUNE』の公開も間近なティモシー・シャラメの出世作『君の名前で僕を呼んで』。イ

記事を読む

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

→もっと見る

PAGE TOP ↑