『借りぐらしのアリエッテイ』 恋愛になる前に

昨年末、俳優の神木隆之介さんと志田未来さんの熱愛報道がスクープされた。関係者は否定したけど、世の中はこの可愛らしいカップル誕生に応援の声があがっていた。若いタレントさんのゴシップで、好意的な声が聞こえるのは最近では珍しい。まったくもって他人の恋愛に口を出すことなんて無粋なこと。第三者がとやかく言うことではない。それに役者だろうがタレントだろうがみんな同じ人間。ある程度の年齢がきたらそれなりに恋愛のひとつやふたつ経験していない方がマズい。ときには恋愛に失敗して、深く傷つくのだって人生のスキル。大人ならなおのこと当事者同士の問題。他者が感情的に責めるような態度はカッコ悪い。なので、神木&志田カップルが実際だったらステキだな~、暖かく見守りたいな~と思える人が多いことに久々にほっこりした。
役者さん同士のカップルが誕生するときは、たいていは良作での共演がキッカケ。名作が生まれる現場の雰囲気も良いということだろう。で、この二人の共演作で真っ先に浮かんだのが、スタジオジブリ昨品の『借りぐらしのアリエッテイ』。小人族の娘・アリエッテイと、病弱な少年・翔の異種族の若い男女が出会って、心が触れ合って、別々の道へと進んでいく。事象としては何も起こらない、ただすれ違うだけの出会い。その恋愛に発展しそうで先へ進まないという、ジブリ定番のセンチメンタリズム。
ジブリ作品は、直接的な性描写はなくともエロティックだとよく言われる。体のつながりより心のつながりに重点が置かれて描かれているからだろう。心という目に見えないところでのつながり。具体的ではないので、もしかしたら誤解かも知れないという危うさ。目に見えないものであるからこそ、子どもでも感情移入できる。上品な恋愛表現。ジブリ作品はアニメ作品というより、普通の映画として観ている人が多いのも、この情緒に所以しているのだろう。
ただ、この目に見えない危うさ故に、妄想に暴走してしまう危険性もなきにしも。この『借りぐらしのアリエッテイ』の完成会見のとき、共演のふたりが、ホントにふわ~っとしているような印象を受けた。一歩間違えば娯楽作品は、現実の人生に悪影響を与えてしまう。だからこそ、共演のふたりが実際にカップルになれたらいいなと思わせるのかも知れない。それはまさに現実が作品を超えるとき。すれ違ったアリエッテイと翔の物語の続きが、現実に続いていく錯覚。
本作の原作は、イギリスの児童文学『床下の小人たち』。メアリー・ノートンの小説は、映画版よりドライで恋愛要素はほとんどない。おばあちゃんが孫に、弟から聞いた小人たちの話を伝えきかせる。その弟が映画版の翔にあたる。彼はすでに戦死していて、虚言癖があったとまで言われてる。アリエッテイとの出会いは、現実から遥か遠い。でもこの小人シリーズはこれから数作書かれていくから、アリエッテイは存在していたってことになるのかな?
ジブリ映画になったら、恋愛要素に重きが置かれるのがなかなか日本的。ジブリ映画は、原作ありでもほとんどの作品がオリジナルなストーリー。たいてい拝借しているのは、設定やエッセンスのみ。借りぐらしというエコな生き方が時代性を感じた。たくましくサバイブしている小人たちにも見習うものがあった。でもそろそろ甘いセンチメンタリズムからは卒業して、個々が自分の責任で現実に向き合わなければいけなくなってきたようにも感じる。情緒に浸るのもいいけど、それで足元が見えなくなったら本末転倒。
なんとなく今という時代は、価値観の変換期にきているような気がする。ちょうどスタジオジブリも新作制作は休止中だし。各々が自分の人生観を見直す時期がきているのかも知れない。
関連記事
-
-
『ホットスポット』 特殊能力、だから何?
2025年1月、自分のSNSがテレビドラマ『ホットスポット』で沸いていた。自分は最近ではほと
-
-
何が来たってへっちゃらさ!『怪盗グルーのミニオン危機一発』
世界のアニメ作品はほぼCGが全盛。 ピクサー作品に始まり、 母体であるディズ
-
-
『ゴジラ(1954年)』戦争の傷跡の貴重な記録
今年はゴジラの60周年記念で、 ハリウッドリメイク版ももうすぐ日本公開。 な
-
-
『塔の上のラプンツェル』 深刻な問題を明るいエンタメに
大ヒット作『アナと雪の女王』もこの 『塔の上のラプンツェル』の成功なしでは 企画すら通ら
-
-
『君の名前で僕を呼んで』 知性はやさしさにあらわれる
SF超大作『DUNE』の公開も間近なティモシー・シャラメの出世作『君の名前で僕を呼んで』。イ
-
-
アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。
ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。
-
-
『君の名は。』株式会社個人作家
日本映画の興行収入の記録を塗り替えた大ヒット作『君の名は。』をやっと観た。実は自
-
-
『アナと雪の女王』からみる未来のエンターテイメント
『アナと雪の女王』は老若男女に受け入れられる 大ヒット作となりました。 でもディズニ
-
-
『ホドロフスキーのDUNE』 伝説の穴
アレハンドロ・ホドロフスキー監督がSF小説の『DUNE 砂の惑星』の映画化に失敗したというの
-
-
戦争は嫌い。でも戦争ごっこは好き!! 『THE NEXT GENERATION パトレイバー』
1980年代にマンガを始めOVA、 テレビシリーズ、劇場版と メディアミック
- PREV
- 『みんなのいえ』家づくりも命がけ
- NEXT
- 『METAFIVE』アンドロイド化する東京人
