*

マッドネエチャン・ミーツ『マッドマックス/怒りのデス・ロード』

公開日: : 最終更新日:2021/01/02 映画:マ行, 音楽

大事なのは理屈じゃない、勢いなんだよ!! この映画『マッドマックス/怒りのデス・ロード』はそれこそ勢いで物語っている。前『マッドマックス』三部作から30年近く、一応は前作『サンダードーム』の後日談になっているみたいだけど、前作を知っていようがいまいがそんなこたぁ小さなことだ。そんなことグダグダ考えている隙もなく、勢い良く映画はタイトルバックまで進んでいく!! ROCKな映画とはこのことだ。ワルノリでカッコ良ければなんでもあり。悪党どものファッションやメカニックがいちいち楽しい。悪党軍団が白塗り丸坊主でこれじゃもう山海塾(古っ)じゃないか!! アングラやカルトの世界。とにかくいちばん気に入ったのは、紅のギター野郎!! 戦いの士気を高める為に太鼓を叩くのは分かる。太鼓隊をトラック後方に乗せ、前方にはドデカイスピーカーに紅のギター野郎が吊るさせれて、ギンギンにギターサウンドをぶちまける! おまけにそのギターは火を噴く!! バッカで〜い!! 夜間にはこの紅ギター野郎はライトアップされてる。周りはみんな暗いのに、ギター野郎だけが紅に光ってる。いざとなったら真っ先に標的だ。こいつが画面の端に写ってるだけで気になってしょうがない。映画を観ながら無意識のうちに頬が緩んでいた。

この映画『マッドマックス』がタイトルだけど、実はマックスが主人公じゃないのがミソ。悪党軍団に反旗を翻す女達がメイン。マックスはそのお手伝い。世紀末の荒廃した時代には、力がモノを言い、女達は子どもを作る為の道具や獲物に過ぎない。権力の象徴の女であるがゆえに、今までの『マッドマックス』には出て来なかった美人ばかり。以前政治家で「女は子どもを作る為の道具」とか発言して総スカン食らった輩がいるが、政治家なんて殆どみんな女性を見下しているものだろう。普段思っていることが、うっかり口が滑ったにすぎないだろうから、他の政治家達もなんで世論がここまで怒るのか意味不明だと思う。セクハラヤジが叩かれる理由もわからない、むしろ世論に叩かれて気の毒にと思ってる政治家なんていくらでもいるだろう。そんな上から目線のアホな男どもに女達が立ち向かう姿が気持ち良い!! 女がダメな男を成敗する姿の娯楽作品がこれからは増えるかも知れない。

監督はすべての『マッドマックス』を監督しているオーストラリアのジョージ・ミラー。『マッドマックス』の後は子豚が主人公の『ベイブ』や、ペンギンが主人公のCGアニメ『ハッピー・フィート』などファミリー映画が続いた。これらの映画も楽しい作品だったが、やっぱり原点のバイオレンスアクション作らなきゃ、死ぬに死ねないと御年70歳の老人とは思えぬパワフル演出。途中息切れするんじゃないかと心配も上の空、始めの勢いは最後まで劣ることはない。最初から最後までずっと走りっぱなしだぜ。スゲーじいさんだぜジョージ・ミラー!!

客層はカップルはもちろん、おつむの弱そうな中坊男子たちや、オールドファンなのか白髪頭のおじいさん2人組なんかもいた。みんなワイワイ楽しく鑑賞していた。

とにかく女性が大活躍するこの映画。シャーリーズ・セロンって元はどんなだったっけぐらいのパンクぶりだし、中途参戦の援軍はバイクにまたがったおばあちゃんだったりと、イマジネーションがぶっ飛び過ぎ。アクション映画は男の人が観るもんでしょ? って普通なら思っちゃうけど、この映画は女性の方がスカッとするんじゃないか? 女性が活躍するバイオレンスアクションで、ここまで成功している作品はいままでなかったと思う。そこがジョージ・ミラーのセンスの良さ。とにかく鬱々とした気持ちをスカッとさせてくれる、パワフルな映画だ。キモチイイ!!!

 

関連記事

no image

90年代再燃か!?『ONE OK ROCK』

  若い子に人気の『ONE OK ROCK』。 映画『るろうに剣心』実写版三部作の

記事を読む

『ホームレス ニューヨークと寝た男』華やかさのまやかし

ドキュメンタリー映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』。映画公開時もとても気になってい

記事を読む

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』 スターの魂との距離は永遠なれ

デヴィッド・ボウイの伝記映画『ムーンエイジ・デイドリーム』が話題となった。IMAXやDolb

記事を読む

『スタンド・バイ・ミー』 現実逃避できない恐怖映画

日本テレビの『金曜ロードショー』のリクエスト放映が楽しい。選ばれる作品は80〜90年代の大ヒ

記事を読む

『THE FIRST SLAM DUNK』 人と協調し合える自立

話題のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』をやっと観た。久しぶりに映画館での

記事を読む

『グレイテスト・ショーマン』 奴らは獣と共に迫り来る!

映画『グレイテスト・ショーマン』の予告編を初めて観たとき、自分は真っ先に「ケッ!」となった。

記事を読む

『鬼滅の刃 無限列車編』 映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんがいる方から、いま子どもたちの間

記事を読む

no image

『みんなのいえ』家づくりも命がけ

  念願のマイホームを手に入れる。自分の土地を得て城を持つことを夢に描くのは、日本人

記事を読む

『名探偵ピカチュウ』日本サブカル、これからどうなる?

日本のメディアミックス作品『ポケットモンスター』を原作に、ハリウッドで製作された実写映画『名

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

→もっと見る

PAGE TOP ↑