*

『チェブラーシカ』哀愁の旧ソ連名残

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 アニメ, 映画:タ行, 音楽

 

なんでも5年ぶりに
新作が作られた『チェブラーシカ』。
こんどは本家ロシア産なのかな?
はたしてどんな作風になっているのか?

ロシアアニメ『チェブラーシカ』を
ウチの娘に観せてみたのは2歳の時。

熊とも猿ともいえない
愛らしいチェブラーシカが、
みんなの役に立ちたいと、
友達とともに公園を作るエピソード。

公園が遂に完成したスピーチを
チェブラーシカがして最後に
「ウラー!!(ばんざーい)」と叫びます。

その仕草と言い方に娘はバカウケ。
もう10回くらいその場面ばかり
ヘビーローテション。
百発百中でバカウケでした。

このチェブラーシカの
「誰かの役に立たなければ」と
自分を追い込んで行くような考え方、
旧ソ連時代型社会主義の名残りなのかと
日本人の自分には違和感を感じた。

音楽や表現が哀愁溢れ、
子ども向けとは思えないくらい
シブい作品になっていた。

日本で本格的に本作が紹介された
2000年代初頭、ミニシアターでやったりと
アート映画の扱いをされていたと思う。

監督はロマン・カチャーノフ。
きっと本作が発表された
1960~70年代の旧ソ連では
子ども向け作品は希少だったでしょう。
少しでも子どもたちに芸術的なものに
触れて欲しいという制作者の優しさを感じます。

カチャーノフが頭角を表すのはスターリン死後。
旧ソ連の共産主義とは関係がないのだろうが、
まだまだペレストロイカ前、
表現の規制が厳しかった頃の作品。

なんでもスターリンは、
時の芸術家たちを自分の配下に置いて、
政治的な作品を作らせたそうです。

芸術家達はプロパガンダに利用されるフリをしながら、
自分の意図を潜ませて作品を作ったらしいです。

政治が芸術に介入して民衆を
コントロールしようとする。
流れのいい時代であれば、
これはルネッサンスにも成長するだろうが、
独裁的な世の中だと、とても不遇なものとなる。

こないだテレビで観たのですが、
音楽家のショスタコビッチは
プロパガンダの象徴的な『革命』という曲で
体制に取り込まれたフリをしながらも、
『カルメン』のなかのフレーズを多用する。
その意味は「信じるな!」。
すぐに悪政は終わるというもの。

気付かれないように自分の意志を忍ばせた。
スターリン時代の旧ソ連の特徴。

この『チェブラーシカ』は近年
日本のスタッフでリメイクされました。

歴史的な暗い要素はバッサリ切って、
表面的な可愛らしいチェブラーシカの誕生です。

時代や国を超えて愛されるキャラクターは
その時代や場所によって性格も変わっていきます。

チェブラーシカに歴史的な重みがなくなるのは
果たして良いことなのか、悪いことなのか?
今後数十年後、過去の歴史観として
冷静に判断できる頃になったら、
文化研究家達が語ってくれることでしょう。

そのとき笑われることがなければいいですが……。

関連記事

no image

『思い出のマーニー』好きと伝える誇らしさと、因縁

  ジブリ映画の最新作である『思い出のマーニー』。 自分の周りでは、女性の評判はあ

記事を読む

no image

『東京物語』実は激しい小津作品

  今年は松竹映画創業120周年とか。松竹映画というと、寅さん(『男はつらいよ』シリ

記事を読む

no image

『チョコレートドーナツ』ホントの幸せってなんだろう?

今話題のLGBT差別の具体例は、映画『チョコレートドーナツ』で分かりやすく描かれていると聞いて、この

記事を読む

no image

『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』人のふり見て我がふり笑え

  なにこれ、おもしろい! NHK Eテレで放送しているテレビシリーズ『ひつじ

記事を読む

no image

『アトミック・ブロンド』時代の転機をどう乗り越えるか

シャーリーズ・セロン主演のスパイ・アクション映画『アトミック・ブロンド』。映画の舞台は東西ベルリンの

記事を読む

no image

『Mr.インクレディブル』好きな仕事に就くこと

  今年続編が公開される予定のピクサー2004年の映画『Mr.インクレディブル』。も

記事を読む

no image

『ポンヌフの恋人』ボウイを愛した監督・カラックス

  デヴィッド・ボウイの訃報はまったく信じられなかった。1月8日のボウイの誕生日に、

記事を読む

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

no image

『借りぐらしのアリエッテイ』恋愛になる前に

昨年末、俳優の神木隆之介さんと志田未来さんの熱愛報道がスクープされた。関係者は否定したけど、世の

記事を読む

no image

『君の名は。』株式会社個人作家

  日本映画の興行収入の記録を塗り替えた大ヒット作『君の名は。』をやっと観た。実は自

記事を読む

『ブラックパンサー』伝統文化とサブカルチャー、そしてハリウッドの限界?

♪ブラックパンサー、ブラックパンサー、ときどきピンクだよ〜♫

『ベニスに死す』美は身を滅ぼす?

今話題の映画『ミッドサマー』に、老人となったビョルン・アンドレ

『白洲次郎(テレビドラマ)』自分に正直になること、ズルイと妬まれること

白洲次郎・白洲正子夫妻ってどんな人? 東京郊外ではゆかりの人と

『サトラレ』現実と虚構が繋がるとき

昨年、俳優の八千草薫さんが亡くなられた。八千草さんの代表作には

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』考えずに依存ばかりしてると

クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・

→もっと見る

PAGE TOP ↑