百年の恋も冷めた。映画版『超時空要塞マクロス』
1980年代、自分が10代はじめの頃流行った
『超時空要塞マクロス』が
ハリウッドで実写化されるらしい。
アメリカでは『マクロス』をはじめ
3作品をひとまとめとして
『ロボテック』というタイトルで放映していたので、
どの要素を使うかはわからないけど……。
このアニメ映画は、そのテレビシリーズの劇場版。
『超時空要塞マクロス 愛おぼえていますか』は
1984年公開だから、もう31年も経つ。
スタッフや出演者もだいぶ亡くなってる。
映画版は、テレビアニメ版を原作にした
オリジナルストーリーの一本完結だが、
いちげんさんではやはり説明不足の内容。
『マクロス』シリーズは、
80年代の『ガンダム』ブームを
引き継いで生まれたロボットアニメ。
このシリーズも息は長く、
最近まで冠作品は続いてる。
制作スタッフ陣も『ガンダム』ファンで
優秀な同人誌作品をつくっていた人たちが
スカウトされプロとして起用されている。
ちょうどこの映画版の頃、
自分もまさに中学二年生。
『中二病』なんて言葉は当時なかったけど、
この『マクロス』はロボットと恋愛、
アイドルをくっつけた
完全に今の萌えアニメのハシリ。
バイクの写真に必ず水着美女がいたり、
レースクイーンとか
メカニックなものと美女っていうのは定番。
メカと女性のツーショットとは
現実では相性の悪い組み合わせだが、
男が好きなものをそろえればこうなってしまう。
本作は戦争ものと恋愛もののイノベーション。
アニメ業界は30年間ずっと同じ事をやってる。
カミングアウトしちゃうと、小学生の自分は
このアニメの主人公リン・ミンメイみて
カワイイおねえさんだな~と、ほのかに想っていた。
だから二次元の世界に閉じこもっちゃう
いまのオタク心理というのは
なんとなく理解できるんです。
ミンメイは30年前の美少女像だから、
いまの美少女のイメージとは違って肉感的。
二の腕も太いし、体型にボリュームがある。
ただ、猫なで声で話してるのは今と同じ。
まあ、同性には好かれないタイプでしょう。
映画版のミンメイが言うんです。
「あなたと私以外、みんな死んじゃえばいいのに!!」
百年の恋も冷めました。
イヤな女だなって。
自分のことしか考えてないんだって。
カワイイだけじゃダメなんだな。
でもこの考え方、
今のサブカル作品のテーマでもある。
自分たちの小さな世界に閉じこもって、
あとはどうでもいいみたいな狭い視野と重なる。
ホントは周りと自分があってはじめて
世界はまわっているのに
自分だけが閉じこもってる。
そんな世界は一見居心地がいいようでいて
じつは閉塞感しかない。自由ではない。
自ら檻の中に閉じこもってしまっている。
この映画の最後でミンメイは、
いままで自分の事ばっかりだったのに、
利他の為に歌うんですね。
ここにカタルシスがある。
今のアニメは、観客の望む方向のみにしか
力点を置いていないので、
コアなファンは増えるだろうが、
それ以外の人には理解できない。
二次元に閉じこもる心理はわからんでもないが、
生身の女の子とデートする方が
数百万倍、刺激的で面白いかってのは、
経験しなきゃ分からない。
傷つくことがあっても、それは経験値アップ。
疑似恋愛は10代で卒業すべき。
日本の作品がガラパゴス化する
起点になったアニメでもある訳です。
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