*

『トンマッコルへようこそ』国は反目してても心は通じるはず

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:タ行

国同士が争うと、個人が見えなくなってしまう。もしかしたら友達になれるかもしれない人とも傷つけ合わなければならなくなってしまう。ふと韓国映画『トンマッコルへようこそ』を思い出す。

この映画が公開されたのは2005年。まだ日本と韓国の仲が悪くなる前。この映画の監督は自分と同世代。映画の記憶も近く、この作品に織り交ぜてあるたくさんのオマージュに気づかされる。日本の作品も多く愛してくれているのがわかる。しかも音楽担当はジブリ映画でおなじみの久石譲氏。影響された作品の遺伝子はジブリ作品の多くから感じる。他にも黒澤明作品や北野武作品、『スイングガールズ』など。戦争描写には『プライベートライアン』の要素は当然あり、トンマッコルの村のイメージは『ロード・オブ・ザ・リング』のシャイアだし。カメラワーク同じじゃん! 『アメリ』や『ノーマンズランド』のようなヨーロッパ映画からの影響も感じる。監督の映画オタクぶりが伺える。

映画の舞台は朝鮮戦争。反目しあう南北朝鮮と、この戦争に加担しているアメリカ。三者三様の国の兵隊達が、トンマッコルという戦争を知らない村で遭遇する。この争いを知らない村で、次第に三者が親しくなっていく。お互いの人間性は認められても、お互いの国が反目し合っている。友情などゆるされない。戦争があると、人はみな幸せにはなれない。

正直韓国の役者さんはあまり知らないので、誰が誰だかわからなくなってしまうのでは?と、当初不安になったが、とても良く出来たシナリオで、登場人物がきっちり個性的に描かれています。なんでもオリジナルは戯曲だったとか。

韓国のこういった親日的な映画はこれからは観れなくなっていくだろうか。とても悲しい。
日本人はよく戦争ぼけだと言われる。でも、ぼけてていいと思うんです。人生には経験しなくてもいいこともある。
過去の歴史を軽んじることさえないよう、想像力と心を配り続けていれば……。

 

関連記事

『トップガン マーヴェリック』 マッチョを超えていけ

映画『トップガン』は自分にとってはとても思い出深い映画。映画好きになるきっかけになった作品。

記事を読む

『ツイン・ピークス』 あの現象はなんだったの?

アメリカのテレビドラマ『ツイン・ピークス』が 25年ぶりに続編がつくられるそうです。

記事を読む

『天気の子』 祝福されない子どもたち

実は自分は晴れ男。大事な用事がある日は、たいてい晴れる。天気予報が雨だとしても、自分が外出し

記事を読む

no image

『ドリーム』あれもこれも反知性主義?

  近年、洋画の日本公開での邦題の劣悪なセンスが話題になっている。このアメリカ映画『

記事を読む

no image

『鉄コン筋クリート』ヤンキーマインド+バンドデシネ

アニメ映画『鉄コン筋クリート』が公開されて今年が10周年だそうです。いろいろ記念イベントやら関連書籍

記事を読む

『ダイナミック・ヴィーナス』暴力の中にあるもの

佐藤懐智監督と内田春菊さん[/caption] 今日は友人でもある佐藤懐智監督の『ダイナミッ

記事を読む

『超時空要塞マクロス』 百年の恋も冷めた?

1980年代、自分が10代はじめの頃流行った 『超時空要塞マクロス』が ハリウッドで実写

記事を読む

no image

原作への愛を感じる『ドラえもん のび太の恐竜2006』

  今年は『ドラえもん』映画化の 35周年だそうです。 3歳になる息子のお気

記事を読む

『デッド・ドント・ダイ』 思えば遠くへ来たもんだ

エンターテイメント作品でネタに困った時、とりあえずゾンビものを作れば、それなりにヒットする。

記事を読む

『天使のたまご』 アート映画風日本のアニメ

最新作の実写版『パトレイバー』も話題の世界的評価の高い押井守監督の異色作『天使のたまご』。ス

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑