*

『トップガン』カッコいいと思ってたけど?

公開日: : 最終更新日:2022/06/25 映画:タ行, 音楽

「♪ハーイウェイ・トゥ・ザ・デンジャゾーン」風にのって歌が聴こえてくる。これは……、映画『トップガン』の主題歌ケニー・ロギンスの『デンジャー・ゾーン』じゃないか!! 近所の小学校の運動会のBGMに『トップガン』を使ってる!? 運動会の使用BGMはいつもツッコミどころが満載。ウケを狙ってわざとダサい選曲をしているのか、本当にセンスが固まっていて30年止まったままなのかよくわからない。まあ殆どが後者なのだろうが……。『トップガン』が流行っていたのは80年代。学校教育はその頃から留まったままなのかと危惧してしまう。

映画『トップガン』を観たのは自分もティーンの頃。当時から映画好きだったが、主に観ていたのはアニメ作品や邦画ばかり。字を読むのが遅い自分は、字幕が追いつく自信が無く、なかなか洋画デビューができずにいた。この『トップガン』の予告編を観たとき、さすがに戦闘機がカッコ良く、これは観たいと思って近所の映画館へ。大入りの観客は自分よりも遥かに年上の大人ばかりだった。当時の映画館はいまのように客席の斜行がなく、前の人の頭がジャマで字幕が読みづらかった。前列の人の頭をよけながら映画を観ていたものです。高校生になってアルバイトして『トップガン』のレーザーディスクを買ったっけ。

一度ハリウッド映画を観てしまうと、この軽快で分かりやすい作風に一気にハマってしまった。日本映画は今も昔も暗くて重いものばかり。(逆に極端に軽薄か)テンポよく前向きなストーリー展開や編集、音楽はとても魅力的だった。まさに80年代は、アメリカ文化がパワフルだったと思う。

映画の主題歌『デンジャー・ゾーン』がラジオから聴こえてきたとき、懐かしさよりも笑いがこみ上げてきた。やっぱり80年代の音。独特のダサさがスピーカーから漂ってくる。なにこれ? 当時はこれがカッコいいと思っていたのだから恐ろしいものだ。あんまりハマりすぎてしまうと、冷静さを失って、自分自身が時代遅れになってしまう。あの時はあの時、今は今と割り切っていかなければ、頭の固いつまらない人間になってしまう。当時は良くても今は通用しないものもたくさんある。臨機応変さが必要かと、この一件で感じた。

そういえば『トップガン』にハマり、そのあとで『愛と青春の旅立ち』を観たら、あまりに内容が同じなのでショックを受けた。『フラッシュダンス』も同じか。同じ内容でバリエーションを変えて、何作もヒット作を作ってしまうハリウッドの図々しさ。いま80年代の映画を観るとしたら、カッコいいというよりも、その時代の雰囲気を思い出させる装置としての活用くらいにとどめておいた方がいい。80年代くらいで昔を懐かしむのは、まだまだ早すぎると思う。実際あのころのセンスはダサいしね。80年代ブーム再燃を仕掛けようとするメディアには騙されないゾ。

そういえば劇伴を担当したジョルジオ・モロダーが30年ぶりに新作を発表したとか。御年75歳健在也‼︎

関連記事

『グラディエーター』 Are You Not Entertained?

当たり外れの激しいリドリー・スコット監督の作品。この『グラディエーター』はファーストショット

記事を読む

『龍の歯医者』 坂の上のエヴァ

コロナ禍緊急事態宣言中、ゴールデンウィーク中の昼間、NHK総合でアニメ『龍の歯医者』が放送さ

記事を読む

『コーダ あいのうた』 諦めることへの最終章

SNSで評判の良かった映画『コーダ』を観た。原題の『CODA』は、音楽用語の最終楽章の意味にもあ

記事を読む

no image

『トゥモロー・ワールド』少子化未来の黙示録

  人類に子どもが一切生まれなくなった 近未来を描くSF作。 内線、テロ、人

記事を読む

『誰も知らない』とネグレクト

父親のネグレクト(育児放棄)で 5歳男児が餓死したという事件。 嫌なニュースです。考えち

記事を読む

『ブラック・レイン』 松田優作と内田裕也の世界

今日は松田優作さんの命日。 高校生の頃、映画『ブラックレイン』を観た。 大好きな『ブ

記事を読む

『ニュー・シネマ・パラダイス』 昨日のこと明日のこと

『ニュー・シネマ・パラダイス』を初めて観たのは、自分がまだ10代の頃。当時開館したばかりのシ

記事を読む

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン』の続編映画。超巨大製作費でつ

記事を読む

『PERFECT DAYS』 俗世は捨てたはずなのに

ドイツの監督ヴィム・ヴェンダースが日本で撮った『PERFECT DAYS』。なんとなくこれは

記事を読む

『ドグラ・マグラ』 あつまれ 支配欲者の森

夢野久作さんの小説『ドグラ・マグラ』の映画版を久しぶりに観た。松本俊夫監督による1988年の

記事を読む

『ケナは韓国が嫌いで』 幸せの青い鳥はどこ?

日本と韓国は似ているところが多い。反目しているような印象は、歴

『LAZARUS ラザロ』 The 外資系国産アニメ

この数年自分は、SNSでエンタメ情報を得ることが多くなってきた

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』 みんな良い人でいて欲しい

『牯嶺街少年殺人事件』という台湾映画が公開されたのは90年初期

『パスト ライブス 再会』 歩んだ道を確かめる

なんとも行間の多い映画。24年にわたる話を2時間弱で描いていく

『ロボット・ドリームズ』 幸せは執着を越えて

『ロボット・ドリームズ』というアニメがSNSで評判だった。フラ

→もっと見る

PAGE TOP ↑