『DENKI GROOVE THE MOVIE?』トンガリ続けて四半世紀
オフィス勤めしていた頃。PCに向かっている自分の周辺視野に、なにかイヤなものが入ってきたのがわかった。見たら確実に気分が悪くなる予感がする邪悪なもの。恐る恐る視線をそちらにおくる。目に入ってきたのは、最近入ってきた20代の女性。問題はそこじゃない。彼女が手にしているクリアファイルが問題なのだ。電気グルーヴのクリアファイル。彼女が手にしていたのは、石野卓球さんとピエール瀧さんがあしらわれたクリアファイルだったのだ!
聞くとその女性はかなりなサブカル女子。なんでも鳥肌実さんのファンクラブにも入っているとか。コアだコアすぎる‼︎ 昔だったら確実にナゴムギャルだったろうに。
ナゴムとは、ナゴムレコードという、電気グルーヴがまだインディーズで『人生』というユニット名だったころのレーベル名。主催者はケラリーノ・サンドロヴィッチさん。筋肉少女帯もそこにいた。電気グルーヴもあの頃と芸風(?)がまったく変わってないのがスゴイ!
電気グルーヴというと、自分よりちょっとお兄さんだけど、同世代同じ時代を生きてきた感じがする。
結成25周年を記念したドキュメントムービーがこの『DENKI GROOVE THE MOVIE?』。
普通、老舗のアーティストというのは、ファンもずっと若い頃から一緒で、みんな同時スライドで歳をとっているもの。電気グルーヴに至っては、もちろんファン暦が長そうな人もたくさんいるが、絶えず若いファンもつかんでいるように感じる。
照れ屋だから、もっと恥ずかしいことをしてしまう。なんともめんどくさい、大人にならずに大人になってしまえた稀有な存在。いや、この映画をよく観ると、卓球さんこそそれだけど、もしかすると瀧さんは結構周りを気にしながらおちゃらけてる。
ピエール瀧さんといえば、最近の若い子は、完全に役者さんだと思っているかも。そもそも樋口真嗣監督の長編実写デビュー作『ローレライ』で、サプライズキャストみたいに出てきた、サブカルアイコンの扱いだった。それが、あれよあれよと『アナと雪の女王』のオラフ役にまでなってしまう。ディズニーにまで食い込みんで、すっかりNHKの朝ドラや大河ドラマの常連役者になってしまうとは⁈
映画では、本人たちのインタビューはせず、周辺の人々のコメントで構成されている。ハリウッドのアーティストのドキュメンタリーのつくり。
ハリウッドスタイルは、基本的にアーティストへのコメントは褒め称えるものとしレジェンド化する。どこまでホントで、どこまでヤラセかわからない。ハリウッド的なゴージャス演出なんてかなりインチキ。
電気が海外進出をはかるとき、どこの国へ行くのかでもめたらしい。そもそも日本のプロダクションは、海外進出なんて視野にない。国内完結型のビジネスマインドでは、海外を普通に意識している彼らの方が孤立してしまうだろう。
でもそうやって視野を外へ外へ向けて行ったからこそ、新しいファンも獲得していけるのだろう。継続できたのはそのチャレンジ精神というか、視野が広かったからだと感じる。実は変わらない印象をキープし続けている裏には、ものすごい変化や革新があるのは確かだ。電気グルーヴはやっぱりキモカッコイイ‼︎
関連記事
-
-
『ツレがうつになりまして。』鬱を身近に認知させた作品
鬱病を特別な人がなる病気ではなく、 誰をもいつなりうるか分からな事を 世間に
-
-
『美女と野獣』古きオリジナルへのリスペクトと、新たなLGBT共生社会へのエール
ディズニーアニメ版『美女と野獣』が公開されたのは1991年。今や泣く子も黙る印象のディズニーなので信
-
-
『モアナと伝説の海』 ディズニーは民族も性別も超えて
ここ数年のディズニーアニメはノリに乗っている。公開する新作がどれも傑作で、興行的にも世界中で
-
-
『スター・トレック BEYOND』すっかりポップになったリブートシリーズ
オリジナルの『スター・トレック』映画版をやっていた頃、自分はまだ小学生。「なんだか単純そうな話なのに
-
-
『父と暮らせば』生きている限り、幸せをめざさなければならない
今日、2014年8月6日は69回目の原爆の日。 毎年、この頃くらいは戦争と
-
-
『スタンド・バイ・ミー』 現実逃避できない恐怖映画
日本テレビの『金曜ロードショー』のリクエスト放映が楽しい。選ばれる作品は80〜90年代の大ヒ
-
-
『ソウルフル・ワールド』 今そこにある幸福
ディズニープラスを利用し始めた。小学生の息子は、毎日のように自分で作品を選んで楽しんでいる。
-
-
『オクジャ okuja』 韓国発、米国資金で米国進出!
Netflixオリジナル映画『オクジャ』がメディアで話題になったのは2017年のこと。カンヌ
-
-
『リリイ・シュシュのすべて』 きれいな地獄
川崎の中学生殺害事件で、 真っ先に連想したのがこの映画、 岩井俊二監督の2001年作品
-
-
『ターミネーター2』 メジャーだって悪くない!!
今年の映画業界はビッグネームの続編やリメイク・リブート作で目白押し。離れてしまったかつての映
