『機動戦士ガンダム』 ブライト・ノアにみる大人のあり方
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最終更新日:2021/03/10
アニメ
『機動戦士ガンダム』は派生作品があまりに多過ぎて、
TSUTAYAでは1コーナー出来てしまうほど。
自分たちアラフォー世代は、いちばん最初の作品である
『機動戦士ガンダム』(以下『ファースト』)がなじみ深い。
主人公のアムロ・レイと、
宿敵である仮面の男
シャア・アズナブルとの戦いを描いた
『宇宙世紀もの』がやっぱり
本家『ガンダム』といっていい。
(厳密に言うと『宇宙世紀もの』でも、
スピンオフ作品も沢山あるのだけれど)
で、この『宇宙世紀もの』に
すべて登場したキャラクターがブライト・ノア。
作品によって主人公は入れ替わっても、
その主人公が乗る戦艦の艦長はいつもブライト。
自分が『ファースト』を
はじめて観たのは小学校1年生。
そのときのブライトは19歳の設定だった。
小学生には立派にオジサンの年齢。
それが最近作の『UC(ユニコーン)』では30代後半。
時代を駆け抜け、すっかり彼も年下になってしまった。
『ファースト』のコンセプトは
「大人なんていらない。若者だけでやっていく」
というものだったろう。
大人はみんな戦争で死んでしまって、
若者だけでなんとかしていかなければならない。
これは当時若かった制作者たちの
「大人なんて信用できない」
という気持ちの表れだったろう。
若者の登場人物の中で、年長者にあたるブライトは
上司というより、部活の先輩というところだった。
『ガンダム』のセカンドシーズン
『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』では、
ブライト達『ファースト』の
登場人物達はみんなパッとしない。
部下に殴られたり、
動き出せなかったりしていて、
なんとなく組織に埋もれてしまっている。
過去の栄光など、誰も敬意を払ってくれない。
ブライトは結婚していて、
二児のパパになっている。
でもシリーズを通して
家族全員揃った場面はない。
仕事人間で家庭を顧みないのが、
当時の父親像だったのだろう。
サードシーズンにあたる
『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』では
ブライトの存在は更に肩身の狭いものとなる。
あまりに家に帰らないから、
仕事場で不倫未遂までしてしまう。
世はドラマ『金曜日の妻たちへ』のヒットで
不倫が美化されていた時代。
『ZZ』では全篇に「大人なんて!!」と
若い主人公達が吠えている。
これはエンタメを商業主義に
はしる連中に対する怒りでしょう。
最終回でブライトは、卑怯な大人への怒りを
大人である俺にぶつけろとか
訳の分からん事を言って主人公に殴られる。
制作者達は、大人として
なんとか責任をとりたかったのでしょう。
アニメブームはこの頃下火になり始める。
完結編にあたる劇場版
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、
かつて上下関係だったアムロとは
同僚のような関係になっている。
息子が10代になっているので、
親らしく振る舞う場面もあったりする。
でも肝心なときには家族と一緒にいないのだ。
ブライトは司令になったけれども、
結局その組織は愚連隊に近いもの。
この映画公開の1988年は、
『AKIRA』や『となりのトトロ』のような
大人向けアニメが多数大ヒット。
自分もアニメを卒業しかけたときに、
引き戻されてしまった。
この年から日本アニメの
おかしな道のりが始まったと言える。
アニメやマンガは子どもが観るもので、
大人の年齢に達してまでそんなものを観るのは
おかしいという「常識」が崩れた年でもあるだろう。
昨年完結した後日談にあたる
『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』でも
ブライトは登場する。
残念ながら声優さんの
鈴置洋孝さんが亡くなったので
成田剣さんにバトンタッチ。
ここではもう、若者への自分の
アイデンティティーの継承に
なってしまっている。
やけにものわかりのいい、
理解のある「良い大人」になっている。
若者が反抗するような大人ではなく、
若者の味方だ。
組織の中に取り込まれ、
歯車の一部となってがむしゃらに働いて、
自分の人生に向き合う余裕もなく、
気がついたら中年になっていた。
若い人にこれと言って示す背中もない。
ブライトは名目上は英雄扱いこそされたが、
実際は不遇で、自身は何も残せなかった。
現実世界の中年男性となんとなくダブる。
若い人に「老害」と言われている
めんどくさい世代。
せめてブライトのように、見込みのある若者に、
なにかを託していくことができたら
それがいちばんの幸いなのだろうか?
このまま今の中年世代がなにもできずに
ただ老いていくだけというのは、
かなり寂しさを感じてしまう。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
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