『トップガン』カッコいいと思ってたけど?
「♪ハーイウェイ・トゥ・ザ・デンジャゾーン」風にのって歌が聴こえてくる。これは……、映画『トップガン』の主題歌ケニー・ロギンスの『デンジャー・ゾーン』じゃないか!! 近所の小学校の運動会のBGMに『トップガン』を使ってる!? 運動会の使用BGMはいつもツッコミどころが満載。ウケを狙ってわざとダサい選曲をしているのか、本当にセンスが固まっていて30年止まったままなのかよくわからない。まあ殆どが後者なのだろうが……。『トップガン』が流行っていたのは80年代。学校教育はその頃から留まったままなのかと危惧してしまう。
映画『トップガン』を観たのは自分もティーンの頃。当時から映画好きだったが、主に観ていたのはアニメ作品や邦画ばかり。字を読むのが遅い自分は、字幕が追いつく自信が無く、なかなか洋画デビューができずにいた。この『トップガン』の予告編を観たとき、さすがに戦闘機がカッコ良く、これは観たいと思って近所の映画館へ。大入りの観客は自分よりも遥かに年上の大人ばかりだった。当時の映画館はいまのように客席の斜行がなく、前の人の頭がジャマで字幕が読みづらかった。前列の人の頭をよけながら映画を観ていたものです。高校生になってアルバイトして『トップガン』のレーザーディスクを買ったっけ。
一度ハリウッド映画を観てしまうと、この軽快で分かりやすい作風に一気にハマってしまった。日本映画は今も昔も暗くて重いものばかり。(逆に極端に軽薄か)テンポよく前向きなストーリー展開や編集、音楽はとても魅力的だった。まさに80年代は、アメリカ文化がパワフルだったと思う。
映画の主題歌『デンジャー・ゾーン』がラジオから聴こえてきたとき、懐かしさよりも笑いがこみ上げてきた。やっぱり80年代の音。独特のダサさがスピーカーから漂ってくる。なにこれ? 当時はこれがカッコいいと思っていたのだから恐ろしいものだ。あんまりハマりすぎてしまうと、冷静さを失って、自分自身が時代遅れになってしまう。あの時はあの時、今は今と割り切っていかなければ、頭の固いつまらない人間になってしまう。当時は良くても今は通用しないものもたくさんある。臨機応変さが必要かと、この一件で感じた。
そういえば『トップガン』にハマり、そのあとで『愛と青春の旅立ち』を観たら、あまりに内容が同じなのでショックを受けた。『フラッシュダンス』も同じか。同じ内容でバリエーションを変えて、何作もヒット作を作ってしまうハリウッドの図々しさ。いま80年代の映画を観るとしたら、カッコいいというよりも、その時代の雰囲気を思い出させる装置としての活用くらいにとどめておいた方がいい。80年代くらいで昔を懐かしむのは、まだまだ早すぎると思う。実際あのころのセンスはダサいしね。80年代ブーム再燃を仕掛けようとするメディアには騙されないゾ。
そういえば劇伴を担当したジョルジオ・モロダーが30年ぶりに新作を発表したとか。御年75歳健在也‼︎
関連記事
-
『うる星やつら 完結編』 非モテ男のとほほな詭弁
2022年の元日に『うる星やつら』のアニメのリメイク版制作の発表があった。主人公のラムが鬼族
-
『東京暮色』 生まれてきた命、生まれてこなかった命
第68回ベルリン国際映画祭で小津安二郎監督の『東京暮色』の4Kレストア版が上映された。小津作
-
『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!
先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之
-
『グラディエーター』 Are You Not Entertained?
当たり外れの激しいリドリー・スコット監督の作品。この『グラディエーター』はファーストショット
-
『BLUE GIANT』 映画で人生棚卸し
毎年年末になると、映画ファンのSNSでは、その年に観た映画の自身のベスト10を挙げるのが流行
-
『アリオン』 伝説になれない英雄
安彦良和監督のアニメ映画『アリオン』。ギリシャ神話をモチーフにした冒険活劇。いまアリオンとい
-
『美女と野獣』古きオリジナルへのリスペクトと、新たなLGBT共生社会へのエール
ディズニーアニメ版『美女と野獣』が公開されたのは1991年。今や泣く子も黙る印象のディズニーなので信
-
『このサイテーな世界の終わり』 老生か老衰か?
Netflixオリジナル・ドラマシリーズ『このサイテーな世界の終わり』。BTSのテテがこの作
-
『さよなら、人類』ショボくれたオジサンの試される映画
友人から勧められたスウェーデン映画『さよなら、人類』。そういえば以前、この映画のポスターを見
-
『帝都物語』 混沌とした世にヤツは来る!!
9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったこと