『天才スピヴェット』所詮天才なんて、ただの個性でしかない。
公開日:
:
最終更新日:2019/06/15
映画:タ行
大ヒットフランス映画『アメリ』の
ジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作『天才スピヴェット』。
フランス人監督によるアメリカ・モンタナの風景は、
カラフルなファンタジーの世界。
もちろんCGで着色盛ってはいるのでしょうが、
ジュネ監督は自然をも味方につけてしまう力があるらしい。
昆虫博士の母と、カウボーイの父という
趣味嗜好のチグハグな両親を持つ
スピヴェット少年のきょうだいたちは、
やはりチグハグな個性を各々発揮している。
チグハグでも慎ましやかに、
幸せに暮らしていた家族に突然悲しい事件が起こる。
その事件には軽く触れたまま、物語は進んで行く。
家族がチグハグだから?
それとも監督が人の心の機微に興味がないから?
少年は科学的発想に長けていて、
雑誌ではレポートが掲載されても、
モンタナの田舎では浮いてしまうだけ。
一度は授賞式を断った少年は、
授賞式に向かうため、ニューヨークに旅に出ます。
一転してロードムービーになっちゃった!!
ふんだんに使われるCGや3D効果は、
少年のイマジネーションを描くためのもの。
でもそんなものは作品においてギミックに過ぎない。
スピヴェット少年は確かに天才だ。
でも天才だって人間。
都会のマスメディアにとっては、
面白おかしく扱われてしまうだけ。
前半、家族の悲しみをあえて描かなかった意味は
大団円で意味を持つ。
この映画は、天才少年の映画ではなく、
家族の映画だった!!
チグハグに見えた家族は、実はちゃんと繋がってた。
そのことがはっきりわかるカタルシス!!
天才は都会で見せ物にされるより、
ちょっと個性的でも、家族と一緒に慎ましやかに暮らす方が
ずっと幸せなんだと、映画は教えてくれます。
子どもが主人公だから、子どもの映画と思ってしまうが、
じつは成熟した大人を試される映画だったのです。
ジュネ監督のマジックにまんまとハメられます。
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