『Love Letter』 ヨーロッパ映画風日本映画
岩井俊二監督の『Love Letter』。
この映画をリアルタイムで観たときに
「やられた~」と思いました。
主演は当時トップアイドルとして
不動の座にいた中山美穂さん。
彼女を主役にすることで、
アイドル映画の要素も含みつつ、
ヨーロッパのアート映画に影響された
画面作りで、泥臭くないドライな映画になった。
言うなれば男が描く少女マンガの世界。
役者さんは、カワイイ芝居に徹底している。
作品世界観はふわふわの甘ったるい感じ。
とにかく今までの日本映画にはなかった
センスの良さとオシャレ感が漂っていた。
遂に日本映画はここまできたか!
当時の自分は岩井俊二監督の大ファンになりました。
もちろんその後の日本映画の恋愛ものの
多くがこのスタイルの演出に影響されていきました。
いまだに邦画はこのスタイルの
二番煎じばかりといってもいいでしょう。
この『Love Letter』はポーランドの
クシシュトフ・キシェロフスキ監督の
『ふたりのベロニカ』から多大な影響を受けています。
そして『Love Letter』は中国や韓国で大ウケ。
韓流ブームの火付け役となった伝説のドラマ
『冬のソナタ』にはものすごい影響を与えてもいます。
ヨーロッパから日本を通し、
アジアへ影響を与え合った。
近年岩井俊二監督は、中国韓国を擁護する
政治的発言をしたことで、大騒ぎになった事もあります。
自作のファンの多い国だからこそ、
仲良くして欲しいと願っているのでしょう。
岩井監督がこういった政治的発言ができるのも、
彼が今活動拠点を日本国外としているからこそ。
やはりいち著名人でも、
日本国内で政治的発言を発信するのは
難しいことなのでしょうね。
様々な意見が気軽に交わせる世の中が、
本当に住みやすい成熟した世の中へと
繋がっていくと思うのですがね~。
しかし映画監督や作家、音楽家には
左翼系の人が多いのは昔から常々ですが、
その受け手であるファンのオタクには
ネトウヨ系が多いのはなぜでしょう?
作品の発信者と受け手、
どうしてこうも思想がちがうのか?
これでは意見が対立して炎上も
ままならないでしょうね。
作家の思想は、大なり小なり作品には
反映されてしまうものだと思うのに。
関連記事
-
-
『ラストエンペラー』 中学生、映画で近代史に興味がわく
イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』。西洋人が描く東洋の歴史。この映
-
-
『俺の家の話』 普通って何なの?
現在放送中の『俺の家の話』がおもしろい。脚本がクドカンこと宮藤官九郎さんで、主演は長瀬智也さ
-
-
『ラストナイト・イン・ソーホー』 ハイセンスなおもちゃ箱
前作『ベイビー・ドライバー』がめちゃめちゃ面白かったエドガー・ライト監督の新作『ラストナイト
-
-
『時効警察はじめました』むかし切れ者という生き方
『時効警察』が12年ぶりの新シリーズが始まった。今期の日本の連続ドラマは、10年以上前の続編
-
-
『レディ・プレイヤー1』やり残しの多い賢者
御歳71歳になるスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』は、日本公開時
-
-
『RAW 少女のめざめ』それは有害か無害か? 抑圧の行方
映画鑑賞中に失神者がでたと、煽るキャッチコピーのホラー映画『RAW』。なんだか怖いけど興味を
-
-
『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?
明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。
-
-
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ある意味これもゾンビ映画
『スターウォーズ』の実写初のスピンオフ作品『ローグ・ワン』。自分は『スターウォーズ』の大ファンだけど
-
-
『ルパン三世 ルパンvs複製人間』カワイイものは好きですか?
先日『ルパン三世』の原作者であるモンキー・パンチさんが亡くなられた。平成が終わりに近づいて、
-
-
『ワンダヴィジョン』 おのれの感覚を疑え!
このコロナ禍で映画に接する意識がすっかり変わってしまった。今まで映画は映画館で鑑賞するものと