*

『あの頃ペニー・レインと』実は女性の方がおっかけにハマりやすい

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ア行, 音楽

 

名匠キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』。この映画は監督自身が15歳で音楽ライターデビューした経験に基づいて描かれている。キャメロン・クロウ作品の登場人物は、いつも生き生きしていて、オシャレで良い面構えしていてとても好き。映画には愛が溢れている。音楽への愛や登場人物への愛だ。サントラの選曲の妙も素晴らしいし、登場人物達はみんな欠点をもっているのだが、それすら愛おしいものとして描いている。当時の奥さんで『ハート』のナンシー・ウィルソンのサントラオリジナル曲もイイ!

映画は年齢をごまかした才能あふれる少年が、音楽ライターとして新進気鋭のバンドツアーに同行するという話。このバンドについてくるグルーピーの女の子への淡い恋心が主軸にある。グルーピーといのはロックスターの熱狂的なファンの女の子で、おっかけの積極的なもの。バンドの中に入り込んで、ロックスターの恋人として振る舞う。女遊びも芸のうちではないけれど、周囲も暗黙の了解。でもどう考えてもハッピーにはなれない関係だ。ロックスターには彼の家族もいるし、グルーピーの女の子も遊びでつき合われているのは百も承知の助。ロックスターもひとときの恋人として連れ合うのだから、魅力的な女の子なのは当たり前。彼女だってもっとハッピーになれる生き方はいくらでも選べるはず。

ロックスターやアイドルのおっかけにハマるのは、オタクのおっさんの専売特許なのかと思いきや、実は女性の方が熱狂的なファンになりがちらしい。これは潜在意識の中で、子孫をつくるときに、優良な種を求めているからかも知れない。ロックスターと結婚しても生活感はなさそうだし、すぐ他の相手に走りそうだが、やはり才能あふれそれに向かって実現する生命力というか肉食力に惹かされずにはいられないのだろう。女性が子どもを生むのは命がけ。男の恋愛感情とはかけるものが大きすぎる。ならば生活よりも、生命力なのかも知れない。優良な子孫を残そうとする、自己犠牲的な無意識な選択なのかも。

男がアイドルや美人タレントにハマるといっても、それはプライドの固持みたいなもの。男は結婚しようが子どもができようが、女性ほど人生や命をかけることはない。もっと気楽なものなので、ホントは女性よりも異性を選ぶ目は甘い。男なんてちょっと女性から優しくされれば、すぐ相手を好きになってしまうものだ。ある意味女性が相手を選ぶ時は、やっぱり現実を見つめ直して妥協していくのかも知れない。

この映画のロックスターもグルーピーもみんな刹那的な生き方をしている。それでもキャメロン・クロウの演出は温かい視点なので、観客は魅力的な登場人物達をどんどん好きになってしまう。なかなかハッピーになれないけれど、生命力ある登場人物達の姿に、ちょっと羨ましくも思えてしまうものだ。

関連記事

no image

『さとうきび畑の唄』こんなことのために生まれたんじゃない

  70年前の6月23日は第二次世界大戦中、日本で最も激しい地上戦となった沖縄戦が終

記事を読む

『async/坂本龍一』アートもカジュアルに

人の趣味嗜好はそうそう変わらない。 どんなに年月を経ても、若い頃に影響を受けて擦り込ま

記事を読む

『イノセンス』 女子が怒りだす草食系男子映画

押井守監督のアニメーション映画。 今も尚シリーズが続く『攻殻機動隊』の 続編にも関わらず

記事を読む

no image

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

  配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロールズ』を選んできた。

記事を読む

『いだてん』近代日本史エンタメ求む!

大河ドラマの『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』の視聴率が伸び悩んでいるとよく聞く。こちらと

記事を読む

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわかにSNSがざわめいた。Net

記事を読む

no image

マイケル・ジャクソン、ポップスターの孤独『スリラー』

  去る6月25日はキング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンの命日でした。早いこ

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある

坂本龍一さんのドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto : CODA』を観た。劇場

記事を読む

『インサイド・ヘッド』むずかしいことをゆかいに!!

ピクサーの2015年作品『インサイド・ヘッド』。ものすごい脚本だな〜、と感心してしまう映画。

記事を読む

『エイリアン』とブラック企業

去る4月26日はなんでもエイリアンの日だったそうで。どうしてエイリアンの日だったかと調べてみ

記事を読む

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

→もっと見る

PAGE TOP ↑