*

『思い出のマーニー』 好きと伝える誇らしさと因縁

公開日: : 最終更新日:2021/08/22 アニメ, 映画:ア行,

ジブリ映画の最新作である『思い出のマーニー』。
自分の周りでは、女性の評判はあまり良くなく、
男性の方が好評価なので、百聞は一見に如かず。

男性には新鮮で、女性にとっては
当たり前すぎることを何でわざわざ映画で
観なくちゃいけないのといったところかな。

果たしてローティーンの
少女同士の恋愛ものなんて、
どこに感情移入したら良いのかと
戸惑いながら見始める。
上映数分もしないうちに主人公である
12歳の少女・杏奈に
かつての自分の姿を見いだした。

自分は小学生くらいの頃、
色白で小柄、ヒョロッとしてたので、
よく女の子と間違えられていました。
性別不詳を楽しんでいたフシもある。

あの頃は男の子とか女の子とか、
性別なんて関係なかったと思う。
そんな自分との類似。

杏奈は「良い子」を演じることに疲れ切っていて、
どこにも居場所を見つけられずにうんざりしている。
自分もこの世界も大嫌い。

そんな中、金髪の少女マーニーと出会う。
瞬く間に二人は親友になり、
恋愛にも近い感情を抱く。

二人が密着する場面が何度も登場する。
丁寧な描写。
それはエロティックな意味合いもあるけれど、
「これは空想ではないんだよ。現実なんだよ」
と確かめ合っているようにもみえる。

杏奈はマーニーのことを好きと認めること、
言葉にして発することによって自信をつけていく。
世界と自分の折り合いがついてくる。

そしてこの映画のもう一つのテーマは、
親子の絆と言うか、代々くりかえされる因縁の話。

親が人生に失敗すると、その子もまた同じ失敗をする。
気づいていたら親と同じ轍を踏んでいた、なんてよく聞く話。

杏奈はマーニーとの出会いで、その過ちに気づく。

原作は児童文学。
原作未読なのでどこまで同じなのか分からない。

しかし子どもに向けても、
親の代の人生の話を赤裸々に描いている。
親の事情をしっかり描いても、
子どもは分かってくれるだろうと
侮っていないところがとてもいい。

子どもはなにが原因で傷つくかわからない。
ましてや思春期ならばなおのこと。

それは大人にとっては些細なことであっても、
当事者の子どもには
世界がひっくり返るくらいの事件だったりする。
一生の傷にもなりかねない。

自分は自分の子どもたちのその傷に気づき、
ちゃんと摘み取ってあげられるか?
責任重大だと感じた。

10代の頃の忘れていた感覚を
思い出させてくれるこの映画。

スタジオジブリならではの
丁寧な描写だったからこそ、
こんなおじさんでも
じっくり鑑賞できたのでしょう。

;

関連記事

『太陽がいっぱい』 付き合う相手に気をつけろ

アラン・ドロンが亡くなった。訃報の数日前、『太陽がいっぱい』を観たばかりだった。観るきっかけは、

記事を読む

『赤毛のアン』アーティストの弊害

アニメ監督の高畑勲監督が先日亡くなられた。紹介されるフィルモグラフィは、スタジオジブリのもの

記事を読む

『時をかける少女』 永遠に続く人生の忘れ物

細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が公開されるにあたり、彼の出世作である『時をかける少女

記事を読む

no image

関根勤さんのまじめな性格が伝わる『バカポジティブ』

  いい歳をした大人なのに、 きちんとあいさつできない人っていますよね。 あ

記事を読む

『坂の上の雲』 明治時代から昭和を読み解く

NHKドラマ『坂の上の雲』の再放送が始まった。海外のドラマだと、ひとつの作品をシーズンごとに

記事を読む

『おおかみこどもの雨と雪』 人生に向き合うきっかけ

『リア充』って良い言葉ではないと思います。 『おおかみこどもの雨と雪』が テレビ放映

記事を読む

no image

『光とともに…』誰もが生きやすい世の中になるために

小学生の娘が、学校図書室から借りてきたマンガ『光とともに…』。サブタイトルに『〜自閉症児を抱えて〜』

記事を読む

『インサイド・ヘッド2』 感情にとらわれて

ディズニー・ピクサーの『インサイド・ヘッド2』がアメリカの劇場でヒットしているとニュースは、

記事を読む

『ヒックとドラゴン/聖地への冒険』 変わっていく主人公

いまEテレで、テレビシリーズの『ヒックとドラゴン』が放送されている。小学生の息子が毎週それを

記事を読む

no image

『カールじいさんの空飛ぶ家』憐憫の情を脱せなければ、ドラマは始まらない。

  ディズニーアニメの最新作『ベイマックス』が 予告編とあまりに内容が違うと話題に

記事を読む

『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』 イベントムービーの心得

我が家では自分よりも家族の方が『呪術廻戦』が好き。その『呪術廻

『ウィキッド ふたりの魔女』 陰惨な世界を軽やかに歌い上げよう

観るべきかやめるべきか迷っていた映画『ウィキッド ふたりの魔女

『ひらやすみ』 とがって、たたかれ、まるくなり。

2025年の冬、自分のSNSのタイムラインでは『ひらやすみ』と

『プレデター バッドランド』 こんなかわいいSFアクション映画が観たかった

『プレデター』の最新作が公開される。近年日本では洋画が不人気。

『藤本タツキ 17-26』 変態宣言を強要する珠玉のアニメ短編集!

『チェンソーマン』は、期待してなかったにも関わらず意外とハマっ

→もっと見る

PAGE TOP ↑