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『裸足の季節』あなたのためという罠

公開日: : 最終更新日:2016/12/21 メディア, 映画:ハ行

裸足の季節

トルコの女流監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンが撮ったガーリームービー。一見した画面の印象はソフィア・コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』。だがこちらの内容は社会派で重く深刻だ。難しいテーマを、甘く切なく美しいファッショナブルなタッチで描く監督の手腕に好感。声高にならない怒りの声。原題の『Mustang』は「主人のいない家畜」という意味。

10代のお年頃の5人姉妹が主人公。男子生徒たちと海辺で遊んでいただけで、フシダラだと保護者たちに家に軟禁されてしまう。学校へも行かせない。日本だったら虐待だ。保護者は祖母と叔父、彼女らの実の父母はすでに他界している。保護者にとって、娘たちのしわあせは、早々に結婚させること。

なにごとも抑圧すれば、相手はその反動でもっと危険なことをする。娘たちのと保護者の対立はイタチごっこ。キズものになったら嫁の行き場がないと、家の周りに鉄格子をつけ外界から遮断しようとする。

一体いつの時代の話だよって思うけど、舞台は現代。どうやらこの家庭はとくに厳格なようだ。周りの友達はもっと自由に青春を謳歌している。古い因習にとらわれている無知な保護者たちに腹がたつ。

強制的な見合い結婚をイヤがる娘たちへ叔母が言う、「あなたたちのためだから」。その言葉を発する人はヤバイ。100パーセント自分のことしか考えてないからだ。

とかくいつの世も、戒律が厳しいのは女性ばかり。所詮男が考えた規則だろうから、男の都合でできている。今の世では矛盾ばかりの考え方。祖母たちだって幼い頃、結婚を強制されるのはイヤだったはずなのに、それだけが人生のしあわせへの道と信じ込む。古い女性が、この男尊女卑を良きものとして受け入れているのが嘆かわしい。女の敵は女ということなのか。自分がした苦労は次の世代もするべきだという考えでは、世の中は一向に良くならない。

でもトルコが特別遅れているのかと言い切れないのが情けない。現代日本だって他人ごとではない。

先日、甲子園のグラウンドに女子マネージャーが入って大騒ぎになった。マスコミは、ユニホームを着た女の子がグラウンドにでたというので、アイドルでも撮るような勢いで、フォトジェニックな写真撮っちゃってる。それはそれで笑える。でも退場させた大会本部の開口一番の意見は「甲子園のグラウンドは神聖な場なので、女人禁制だ」と言ったとか言わなかったとか? そうなるとこれはこの映画の保護者たちと同じマインドだ。

一昔前まで、年頃の娘をもつ父親で、娘のボーイフレンドを著しく拒絶するってコメディのネタみたいな人が多かった。古いタイプの父親像。子どもが巣立っていく寂しさはあるだろうけど、「恋愛=フシダラ」って即なっちゃうのは、その人が良い恋愛をしてこなかったせいなんじゃないのかな?

だけど、年頃になってもボーイフレンドができないのだって心配。そりゃあ、みるからにヤバそうな相手と付き合っていたら止めるだろうけど。子どもたちだって自分の身を守る危機感はある。それほどムチャはしない。

重要なのは、もしその子が道を違えそうになったとき、きちんとアドバイスできるのが、本当の意味で保護者の役目。子どもと向き合って、信じて、自由にする。それが理想。

多種多様な人生観がある現代社会。どれが良くてどれが悪いかなんて十人十色。こうあるべきモデルケースなんてあってないようなもの。抑え込んだら反抗してもっとムチャをする。それでいちばん最悪の事態になったら本末転倒。少なくとも、みなぎるパワーを大人への反発に費やすなんてもったいない。

そして早いとこ、そんな世間の誘惑なんて卒業しちゃえばいい。世の中にはもっと面白いことがたくさんある。そんなとこでモタモタしないで、自分が本当に好きなことに打ち込めるよう、そのパワーを持っていく。それが世の中のためになる職業へつながれば、なお良しだ。

好きなもの、綺麗なものに触れ、自分の趣味嗜好を知って磨いていくのは大切なこと。

しあわせは、自由があってはじめて手に入る。そして自由は自分で責任をとることでもある。それが自立。自分で考え、行動し、責任をとる。その能力は、これからの社会でいちばん重要だと思う。人生において、時には屈折も必要。だが、いつまでも屈折してるヒマはない。人生、その時期にやっておいた方がいいこともたくさんある。のちの人生に、わすれものは極力減らしたいものだ。

5人娘が主人公の映画なのに、どうしても親目線で観てしまう。自分もそれなりに年齢を重ねたのだとしみじみ感じてしまう。やれやれ。

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