『乾き。』ヌルい日本のサブカル界にカウンターパンチ!!
賛否両論で話題になってる本作。
自分は迷わず「賛」に一票!!
最近の『ドラえもん』はジャイアンやスネ夫が
のび太をあまりいじめなくなった。
けれど作者の藤子F不二雄氏は、
このいじめの描写の中から、
どうくぐりぬけていくかの教訓も込めていたと思います。
物語上で主人公に何らかの葛藤が強いられただけで
「みたくない」「きらい」とネットの感想は氾濫する。
葛藤を乗り越えていく主人公の姿で、
観客は勇気を貰うはずなのに、
その前に観客側から弱音がでる。
観客が望まないので、「何も事件が起こらない作品」が
日々作られて、なぜかそれが人気があったりする。
そんな世の中の作風にまっこうから逆行した本作。
ここまでやるかとバイオレンス描写。
メンヘラな人しかでてこない狂気の世界。
時系列がバラバラなのも、狂人の頭の中をみせられている感覚。
終止酔っぱらっている感じ。ハイテンション。
中島哲也監督は、あらゆるサブカル的テクニックを駆使して
おもしろおかしいエンターテイメントに仕上げている。
このサイコパスで殺伐とした世界観。
ファンタジー感覚で描いてはいるものの、
人生の裏道にちょっと迷い込めば、
すぐ仲間入りできちゃうくらい、実は身近な世界。
エンタメポップカルチャーの王道をいきながら、
人生を踏み外した人々を徹底的に真っ正面から掘り下げる。
実はかなり道徳的で教訓的。
イヤなものをみせつづけられる観客は、観賞後どう思うか?
観客それぞれに受け止め方をゆだねている。
メチャクチャにみえて、
「実は作り手はものすごく真摯なのでは?」
と感じさせる、そんな作品。
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