*

『火垂るの墓』 戦時中の市井の人々の生活とは

公開日: : 最終更新日:2021/05/20 アニメ, 映画:ハ行,

昨日、集団的自衛権の行使が容認されたとのこと。

これから日本がどうなっていくのか見当もつきませんが、
昨日が日本の近代史に残る日となったのは確かです。

戦後、戦争経験のある作家たちが、
多くの反戦の物語を紡いできました。

その根底にあるのは、戦争に対しての怒り。

これは戦争を体験した人からしか出てこない表現です。
だからこそ反戦のメッセージが強く伝わってきます。

今、戦争経験者が少なくなってしまい、
ある意味、真の反戦作品は描けなくなっているでしょう。

戦争を真剣に取り上げるのにはパワーも要りますし、
観る方もそれなりに覚悟が必要です。

スタジオジブリがつくった『火垂るの墓』。
これは上記の反戦映画とはちょっと趣が異なります。

怒りやメッセージ性というより、
もっとドライなものを感じます。

高畑勲監督は、
戦争中の市井の人々の生活が
どうであったかに視点を置いてます。

空襲を受けるとどうなるか?
飢えて死んでいくとはどういうことか?
戦時中の一般市民の狂気とは?

これらを淡々と調べていった結果が
作品となった感があります。

高畑監督の最新作『かぐや姫の物語』も
竹取物語を研究した解釈の結果論文を
映像でみせられているという印象でした。

戦争中の生活を感情抜きで淡々とみつめていく。

偏った視点ではないので、リベラルな作品になります。
このクールな視点がかえって当時の悲惨な状況を
リアルに伝えてくれるのです。

戦争によって子どもたちが死んでいく本作。
観るのもつらい状況なので、
そうしょっちゅう観たい作品ではありませんが、
一度は観ておかなければいけない作品ではあります。

主人公の兄妹の魂は、
時間を越え延々と彷徨っています。

これが過去の物語で、
未来の物語にならない事を祈ります。

関連記事

『バーフバリ』 エンタメは国力の証

SNSで話題になっている『バーフバリ』。映画を観たら風邪が治ったとまで言われてる。この映画を

記事を読む

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲った映画『関心領域』。日本が舞台

記事を読む

『星の子』 愛情からの歪みについて

今、多くの日本中の人たちが気になるニュース、宗教と政治問題。その中でも宗教二世問題は、今まで

記事を読む

『このサイテーな世界の終わり』 老生か老衰か?

Netflixオリジナル・ドラマシリーズ『このサイテーな世界の終わり』。BTSのテテがこの作

記事を読む

no image

『カーズ/クロスロード』もしかしてこれもナショナリズム?

昨年2017年に公開されたピクサーアニメ『カーズ/クロスロード』。原題はシンプルに『Cars 3』。

記事を読む

『レディ・プレイヤー1』やり残しの多い賢者

御歳71歳になるスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』は、日本公開時

記事を読む

no image

『ブレイブハート』かつてのスコットランド独立戦争の映画

  スコットランドがイギリスから 独立するか否かの投票率は84%。 有権者の

記事を読む

『おおかみこどもの雨と雪』 人生に向き合うきっかけ

『リア充』って良い言葉ではないと思います。 『おおかみこどもの雨と雪』が テレビ放映

記事を読む

no image

『ポンヌフの恋人』ボウイを愛した監督・カラックス

  デヴィッド・ボウイの訃報はまったく信じられなかった。1月8日のボウイの誕生日に、

記事を読む

『イノセンス』 女子が怒りだす草食系男子映画

押井守監督のアニメーション映画。 今も尚シリーズが続く『攻殻機動隊』の 続編にも関わらず

記事を読む

『トクサツガガガ』 みんなで普通の人のフリをする

ずっと気になっていたNHKドラマ『トクサツガガガ』を観た。今や

『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』 黒歴史を乗り越えて

カナダ映画の『アイ・ライク・ムービーズ』がSNSで話題になって

『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』 映画鑑賞という祭り

アニメ版の『鬼滅の刃』がやっと最終段階に入ってきた。コロナ禍の

『ひとりでしにたい』 面倒なことに蓋をしない

カレー沢薫さん原作のマンガ『ひとりでしにたい』は、ネットでよく

『舟を編む』 生きづらさのその先

三浦しをんさんの小説『舟を編む』は、ときどき日常でも話題にあが

→もっと見る

PAGE TOP ↑