『ツレがうつになりまして。』鬱を身近に認知させた作品
鬱病を特別な人がなる病気ではなく、
誰をもいつなりうるか分からな事を
世間に広めるきっかけになった作品でしょう。
原作者の細川貂々さんは自分と同年代。
フリーランサーである自分にとって、
かなり近い存在でもある。
細川貂々さんのご主人であるツレさんが
鬱病になった闘病記を綴ったコミックエッセイ。
このコミックエッセイに描かれていることは
とても悲惨で、ご夫婦のご苦労がうかがえます。
それを軽いタッチのマンガと言う表現で、
マイルドにコメディとして伝えたところに
この作品の価値があると思うんですね。
人間はどんなにつらい状況におかれても、
ユーモアのセンスをなくしてしまっては終わりです。
つらくても笑い飛ばす。これが大事。
さらっと描いているエピソードの数々、
実際は大変だったのであろうことがうかがえるのです。
この作品はドラマや映画になりました。
ドラマはNHKで藤原紀香さんと
原田泰三さんがこの夫婦を演じました。
鬱病を柔らかい作風で、
マンガ表現でオブラートにくるんで伝えた本作。
あらためて人が演じてしまうと、
悲惨な状況しか伝わりませんでした。
難しいです。
映画は宮崎あおいさんと堺雅人さんが夫婦役という
NHK大河ドラマ『篤姫』コンビ。
この二人が主役になった事で、
かわいくてオシャレな夫婦像の
モデル映画みたいになりました。
鬱を扱うというよりは、
「夫婦っていいよね」みたいな映画になりました。
監督は佐々部清さん。『夕凪の街 桜の国』など、
原作の本来の主題をすぎかえて
映像化してしまう監督さんなので
仕方ないかもしれません。
ウチでは夫婦でこの映画を鑑賞しましたが、
ふたりで「なんか違うね~」と語り合ったものです。
いま、原作がヒットしたら
すぐ映像化してしまう傾向があります。
本当にその作品を愛していない人たちの手によって
どんどん元と違うものが生まれて行くのは、
果たしてどんなものかといぶかってしまいますね。
関連記事
-
-
『俺の家の話』 普通って何なの?
現在放送中の『俺の家の話』がおもしろい。脚本がクドカンこと宮藤官九郎さんで、主演は長瀬智也さ
-
-
『乾き。』ヌルい日本のサブカル界にカウンターパンチ!!
賛否両論で話題になってる本作。 自分は迷わず「賛」に一票!! 最近の『ド
-
-
『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?
今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長
-
-
『時効警察はじめました』むかし切れ者という生き方
『時効警察』が12年ぶりの新シリーズが始まった。今期の日本の連続ドラマは、10年以上前の続編
-
-
『チャッピー』哲学のネクストステージへ
映画『チャッピー』が日本公開がされる前、この作品に期待の声があちこちから聞こえて来た。自分はこの映画
-
-
『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』 25年経っても続く近未来
何でも今年は『攻殻機動隊』の25周年記念だそうです。 この1995年発表の押井守監督作
-
-
『塔の上のラプンツェル』 深刻な問題を明るいエンタメに
大ヒット作『アナと雪の女王』もこの 『塔の上のラプンツェル』の成功なしでは 企画すら通ら
-
-
『進撃の巨人』 残酷な世界もユーモアで乗り越える
今更ながらアニメ『進撃の巨人』を観始めている。自分はホラー作品が苦手なので、『進撃の巨人』は
-
-
『タイタニック』 猫も杓子も観てたの?
ジェームズ・キャメロン監督で誰もが知っている『タイタニック』の音楽家ジェームズ・ホーナーが飛
-
-
岡本太郎の四半世紀前の言葉、現在の予言書『自分の中に毒を持て』
ずっと以前から人に勧められて 先延ばしにしていた本書をやっと読めました。
- PREV
- 『トゥモロー・ワールド』少子化未来の黙示録
- NEXT
- 『猿の惑星: 創世記』淘汰されるべきは人間